エレンが巨人に、なった。茫然と、私はただその事実を受け入れられずにじっとエレンらしき巨人を見つめていた。ああ、何と嘆かわしいことだろうか、巨人をこの世から一人残らず駆逐すると私たちの前で高らかに、高言していたではないか、あのエレンが、どうして、


「おい、大丈夫かナマエ」

『ラ、イナー』


真っ青だぞ、と心配したようにライナーが声をかけてくれたがそれに答える余裕が今の私にはなかった。深く深く息を吸ってから、ライナーだって、顔、真っ青だよ、と一言返し会話を終了させる、私たちはあと何人殺せば解放されるのだろうか、赦してもらえるのだろうか、いや、無理だろう、ああ、この世は理不尽で溢れ出る、ちらりと隣でうなだれているジャンを見ながら心の底からため息を吐いた。



20130615/あゞ無情