「ナマエ、隣いいか?」
『…ライナー、か、クリスタの隣あいてるからそっち行けば?ユミルいるけど』
「あのなあ…」
『冗談だよ、ベルトルトは?』
「後からくる」
『そう』
嘆いても、喚いても、事実はかわらない。なんと嘆かわしいことだろう、何度苦渋の選択を迫られただろう、その度に何かを切り捨て進んできた、故郷に帰るため、それだけを目標に、たくさんの犠牲を払ってその上成り立ってきた、なの、に、止めだ止め、今すぐに思考を停止、ここには鋭いヤツがたくさんいる、考えるな、目先のことだけに集中しろ、
「大丈夫か」
『あ?今この状態が大丈夫に見える?』
「ああ大丈夫そうだな」
『ライナー、話聞けよ』
「心配したんだよ、ナマエ」
『…ベルトルト』
ベルトルトにまで心配をかけてしまった、ということは当然アニも気がついているのだろう、本来悩む必要なんて無いのに、ここで生活していると、おかしくなるんだ。自分が何なのか、忘れそうになる、でも、
『ベルトルト、ライナー、ありがとう』
「ああ」
「どういたしまして」
アニにもあとでお礼を言おう、そして絶対、帰るんだ。そのためなら私は皆を裏切るだろう、だけど、それまではせめて、と願うのはやはり罪なのだろうか。
20130521/人の子でありたかった