音無さんと仲良くなって、世界が変化したような、そんな感覚を覚える。少しクラスにいるのが楽しくなって、クラスの人とも話せるようになってきたそんなある日、僕は図書室に本を返そうと廊下を歩いていた、空き教室に音無さんらしき人が一人外を眺めているのが見えて、僕は立ち止まった。目が腫れている、ああ、もしかして、ゆっくり足音を立てないで教室に近づいて、やっぱり、泣いてる、んだ。理解したとたん、どれだけ自分が無力な存在なのか知らしめられたような気がして、どうしてこうなんだろう、僕はこうやって見ていることしかしないで、いや、音無さんは、僕になんて言ってくれた?彼女はあの日の僕のように助けを待ってる、かもしれないのに、そうだ、僕は、



『っお、となしさ…うあっ』
「?!だ、大丈夫ですか?!」
『だ、大丈夫…』


大丈夫だけど物凄く恥ずかしい。好きな人にこけたところ見られたとか、本当に顔から火がでそうになるくらい、本当に恥ずかしい。


「意外におっちょこちょいなんですね、」

『う、もう忘れてください…』


本当、恥ずかしすぎる。咄嗟に持っていた本で顔を隠す。これで顔はみられることは無い、多分…。


「あ、その本…」
『…これ?あーこれね、主人公が女の子で、面白いんだ』
「主人公…どんな子なんですか?」

『どんな子…えっと、強がりででも本当は泣き虫でな子、だよ』

「それって、」


まるで私みたいと、やっと笑ったねと嬉しくて言ったら音無さんが驚いたような顔をして、ぽろりぽろりと次から次へ涙を流していく。僕はどうすればいいのかわからずとりあえずハンカチを渡す。あ、よかった受け取ってくれた。


「、ありがとう、!」

『…っうん、』




ねえ、春奈さん。僕、少しはかえせたかな?僕、春奈さんと出会えていろんなものを信じれるようになったし、いろんな風に世界が見えるようになったし、少しだけ、ほんの少しだけだけれど生きる意味っていうものがわかるようになったんだ。嘘じゃないよ、本当さ。だからこの先も、来世も、願うよ。また春奈さんの右手が僕の左手が握られていることを、





「今回は何描いてるの?」

『、春奈さんには秘密!』


20110719/ヒロイズムに焦がれる少年