あれから一週間、前とは一変した生活に私はどこか不安を隠せないでいた。なにか、ある。第六感、シックスセンスというものが警鐘を鳴らしているのが聞こえる。その声に従うべきなのか、それともここにいるべきなのか、ゆらゆら、ゆらゆら


「元気にしてた?」

『…あ、なた…は』


「遊びにきてあげたんだよ、」


それにしても本当ここあいかわらずっていうか、警備がってかこの間より強化されてない?まあ俺にとっちゃあんなの苦でもなんでもないけど…ああそういえば君でられないもんね、わかるはずがないか。私に始終楽しそうにケラケラと語っている、今の話だけで私の背筋を凍らせてるのには十分なのに、



「ねえ、君はなんでこんなとこに閉じ込められているのか、知ってる?」

『しら、ない知らない突然、いつの間にかここに、いて…っ』
「へえ、いつの間にか、ね」


なに、なんなの、その含み笑いは、なに、なんでそんな風に私を見るの、嘲笑ってるの、見下すの、構うの、何が、おかしいの?


「エスカのヤツも報われない、だけど本当ここまでくると滑稽な物語だよね、エンディングはもちろん、バッドエンド」


キミとエスカにはハッピーエンドは似合わないよ、耳元で"あのとき"と同じように囁かれる。ひゅ、と息がつまるような音がした。苦しい、苦しい、声が、喉が、じりじりやけているように熱くて、声がでない、

「本来の予定ならどんな手をつくしてもキミのことを手に入れようとしたんだけど、」


ッチ、舌打ちと同時にホルスターから銃を三発ドアに向かって放つ。いきなりのことで何で発砲になったのかまったくわからない、見たくないはずなのに首が勝手に動いて、目に飛び込んできたのは息を切らしているエスカバさまで、今にも飛びつきかかりそうな勢いで睨んでいる、それをもろともせずに飄々としてる彼はスゴイと、思った。


「でも、やっぱやめといてあげるよ。面白いエスカが見れたことだし、Aランク級任務お疲れ様、それじゃ…またね」


ひらり、背を向けたと思ったらもうそこに彼の姿はなくて、私とエスカバさまだけの空間になる。私がここに閉じ込められてる、理由、っ


『エ、スカ…バさま?』

「っ、少しだけ、少しだけ…悪、ぃっ」


ぎゅう、と抱きしめられる。ちょっと苦しく感じるけれど決してこの苦しさは苦ではなくて、むしろ愛おしさを感じた。なんで、わからない。


「―――――…Ich liebte Sie.

『、え…?』

何、と聞き返すことは出来ず、気が付いたときにはエスカバさまの顔が目の前にあって、キス、されてると気が付いたときにはなんでか、悲しくないのに、泣きたいって思っているわけでもないのに、どうしてか、心がぎゅうぎゅうに締め付けられて、気がつけば泣いていた。それをそっとエスカバさまがいつもからは考えられないくらい優しい手つきで拭ってくれて、もっと涙が出て、翳む眼で見たのは悲しそうに笑うエスカバさまだった。




エスタブリッシュメントエスケープ/20110708end