ぽつんと広い寂寥感漂うこの部屋に一人取り残される。ゆっくりと後ろを向いて壁に
新しくできた小さな穴を指でなぞる。





『あつい、』

「、怪我しても知らねえからな」



『…エ、スカバさま』





後ろを向く、少しぎこちない動きだった。もう少し時間があればもっと自然な動きが
できた?ふるふると頭をふってエスカバさまを見据えると顔をそらされてしまった。ああ、これは完全に機嫌が悪い、まあ原因は明白、私の脱走とさっきのやり取りでだろう。それにこの匂い、きっと任務帰りで、



「さっき、ミストレになに言われた?」

『え…あ、』


「んだよ、俺には言えないってか?」
『違います!ちが、くて…』
「じゃあなんなんだよ!!」


ガンッと床に叩き付けられた銃が私の足元へとからからとまわって恐怖に囚われてガクガクとしだす足を腕で必死に抑えようと試み。ああ、止まらない…っ


「…っあー、くそっ」
『っ、ごめ、なさ…』


「、だああぁあああっ、悪…かった、ほら、これ着ろ」
『え、あ…』

「今まで、怖がらせて悪かった、」


…エスカ、バさま?んだよ、ああエスカバさまだ。この変わりようは、一体何…?

「この部屋から出るなよ、じゃ俺は隣に戻る。なんかあったらこれで呼べ」

『は、い』


渡されたのは小さなブザー、ああ結局私は逃げられないのか、と同時にも悟った。





エスタブリッシュメントエスケープ/20110610