パチリと目が覚めたときには見慣れない部屋が私の視界に広がる。大きな得体の知れない恐怖が何故か胸いっぱいに押し寄せる、なんで、なんで、?



「起きた?」

『っだ、れ?』


「第一声がそれ?飼い主の躾なってないけどまあ今は気分がいいから許してあげるよ」


ニッコリと人の良さそうな笑顔を浮かべ徐々につめよってくる。ヤバい、この人は、危ない。そうどこかで危険信号が発信される。どうしよう、どうすれば、じりじり距離は狭まる一方、為すすべはないの…?助けて、助け、てよ…っ


「はあ、そんな顔しないでよ。俺がいじめてるみたいじゃん、」

『な、』

「なにその顔、俺はただ君と話したかっただけだよ。」


エスカが執着している人形さんと、ね。



気が遠くなった、なんて言った?エスカ、だっ、て?うそ、うそうそうそ!!


『うそ、でしょ?』

「ああ、逃げ切ったとでも思ってたんだ?残念だけどエスカからは逃げ切れなかったみたいだよ。だからここに君はいるんじゃないか、あ、もしかしてここがどこだかわからない?ここエスカに与えられた部屋の一つだよ。」


ズルズルと床に落ちる。ああ、戻ってしまったんだ、そうだ彼の服、それはエスカバさまの着ていた制服と同じもの、だ。なら彼の言っていることは本当だろう、嘘だったらどれほど喜べただろうか、



「、その絶望に満ちた目、なる程ね、エスカが執着するのわかるよ。」

カツリ、カツリとブーツの音が近くで聞こえる。黒のブーツを私の視界がとらえる、



「俺のところにおいで、エスカのように乱暴には扱わないよ?」


耳元に低く響く囁き、顔をあげれば中性的な整った彼の彼が、少しでも動けばキスできてしまいそうな距離。彼のところに行こうか、迷っていると脳裏に浮かんだのはエスカバさまだった。






エスタブリッシュメントエスケープ/20110429