走って走ってたどり着いたのは廃屋だった。屋根も壁もボロボロで柱も支えるのがやっとであろう、現にみしみしと建物は悲鳴をあげていた。、ここも長くはもたないだろう、そう検討し足音を立てないように忍びながら歩く、見つかったら、オワリだ。




「チ、どこいきやがった…!」

『…っ、』



ガクン、と全身から力が抜けそうになるのを必死にこらえて息を殺す。寒くないのに震えが止まらない。身を縮めて両手でぎゅっと自分を守るようにして物陰に隠れる。ハヤク、ハヤクハヤクハヤク、一刻も早く安全な場所へと、逃げなければならないのに。まだ壁の向こう側からは足音が聞こえる。バクンバクンと心臓が激しく鼓動する。足音が近づくにつれ心臓の音も大きく跳ね上がる、イヤだイヤ、見つかりたくない…っ!願いが届いたのかどんどん足音が遠のいていく、助かった、?ああ、私助かったんだ、大きく息を吸って息をする。まだここにいよう、まだ、直にこの場所も悟られる、早く移動しなければならないのかもしれないけれど足が上手く動かない、その上意識が朦朧とする、窓から入ってくる闇に身を委ねた。






エスタブリッシュメントエスケープ/20110424