「これで本当にいいの?」

『何が?』


そう返すと一之瀬くんは困ったように笑った。多分私が質問にきちんと答える気はないと悟ったのだろう。ぼうっと天井を見つめる、本当に、いいの…か。




『いいんだ、これで』


そう、円堂くんが幸せなら私は幸せだ。私はたくさん円堂くんから幸せをもらったもの、だから欲張ってしまった、たくさん欲しがってしまった、その結果がこれなのだから受け入れなければならないのだ。


「話くらいしてくればいいのに」
『一之瀬くん、私はね幸せだったよ。だからもういいの、十分だよ』



そう、十分なの。今までが幸せすぎた、それだけなのだ。鉄塔から始まって、始めて名前を呼んでくれて、部活に誘われて、素敵な仲間まで円堂くんは私にたくさん素敵なものや思い出や気持ちをくれたんだ、円堂くんには感謝しきれないなあ。




「なら、なんで泣いてるの?」

『―――…あ、れ?』


ほんと、だ。私泣いてる。いやだなあ、せっかくの円堂くんの結婚式なのに何私泣いてる一之瀬くん、涙ってやっぱりしょっぱいね。

「俺と一緒に円堂のところ行こう、今ならまだ間に合う」
『だ、め…だよ一之瀬くん』
「どうして、なんでいつもだめだって言うの?円堂だって望んでるかもしれないのに、」
『それはないよ、だってあの二人は相思相愛だから。』


だからね、私が裂いていくような真似はしたくないんだ。一之瀬くんならわかるでしょ?この気持ち。だからいいの、でも、一つだけ後悔してることがあるんだ。最後にね、




『好きでしたって、言いたかった、な』


ドロップアウトエモーション/20110502



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