『鬼道っていいよね…』
「…なんでだよ」


ブスッとふてくされる佐久間を尻目にグラウンドで走っている鬼道を見る。いいよないいよな、鬼道はいいよ、本当に。


「おいっいい加減話聞け!!」
『あ、ごめんつい鬼道に見入ってた…って、佐久間?』


どうしたのだろうか、急に黙られても困るんだけど…佐久間佐久間、おーい、さーくーまー!…反応なし、いくら何でもここまでシカトされると私だって悲しくなってしまう。うー…ん、あ




『次郎』
「っな、いいいいきなり何だよ!」
『いきなりって、佐久間がシカトしたから』
「はあ?お前もしてただろーが」
『うん、ごめんね?だって羨ましかったんだもん』
「…なにが?」

『鬼道、だよ。きーどーう!』


本当羨ましいよ、鬼道。そりゃ私だって鬼道のこと尊敬してるし、天才ゲームメーカーって呼ばれるだけの人だと思う、だけど



「さっきから鬼道鬼道って、お前そんなに鬼道のこと好きなのかよ…っ」
『は?』
「っだから!そんなに鬼道のことが好きなら鬼道のこと行けばいいだろ!!」


え、なに佐久間どうしたの勘違いしたの、いやまっさかあ、え、今ので?…っは


『っはは、あっはははは』
「何笑ってんだよ!俺はだ、」

『だ、だって佐久間、が、お門違いなこと言う…っから!』


おかしくて、それに、佐久間の顔!美人さんなのに勿体無いよ、は、腹がよじれそうだわ!



「じゃ、じゃあ何で鬼道が羨ましいんだよ」

『、あーそれは、ね』


正直に言ってしまおうか、それでもいいかもしれない。だけどまだ、もう少しだけ、この気兼ねない関係を保っていたい、まだ、友人として佐久間の隣にいたい。だから、ごめんね、佐久間。





『ゴーグルだよ、ゴーグル!私花粉症だからさー目、痒くて痒くてたまらないの、だから羨ましいなあーって』


嘘は言ってない、でも本心も、言ってない。だってまだ友人でいたいから、そっちが勝っちゃったから。




「んだよ紛らわしいこと言うなバカ!!」
『っちょ、さ佐久間!……あーあ行っちゃった、』


ま、仕方ないかな。苦笑してから後ろを向くと呆れ顔で腕を組んで佇んでいる鬼道が目に入る、あー、



『やっほー鬼道』
「あんまり佐久間をからかってやるな」

『あはは、善処しまーす!じゃ、私は帰るね、サッカー頑張れよ日本代表!』


カバンを背負いなおして鬼道の背中を叩き佐久間の走り去っていった方向へ足を進める。きっとすぐそこにいるであろう佐久間の姿を思い浮かべて、薄く笑みを浮かべた。