ナマエ、大切な彼女の名前を呼ぶ。愛おしい、はずなのに。この心の霧がかかったようなはっきりしないようなこの感じ、は一体なんなんだろうか、いや、わかっては、いるんだ。本当はわかっては、いるのにな。どうしようもない自分の不甲斐なさ無力さに笑えてくる。俺は誰を求めている?そんな、わかりきったことを、




『マー、ク。』

「あ、悪い…」

『ん、いいよ…』


寂しそうに笑っている、その笑顔に隠された意味を知りながら俺は知らないふりをする。本来だったら最低だと、罵られてもいいんだ、なのに、ナマエは優しいから…っ!どうして、なんてわかりきっている。なんで、なんて知っている。そんな俺をわかって、知って、受け入れるナマエは、俺には、不釣合いで優しすぎるんだ。でもナマエがいないと俺は何もできない赤子のようにただ泣いているだけの非力な存在になってしまう、んだ。


「どこも、いかないで…っくれ、」

『いかないよ、マークがそう望む限り』


「っああ、」


チームメイトが今の俺の姿を見たらどう思うだろうか、絶句するだろうか、それならまだましだな、幻滅、する奴もいるんだろうな。そう思うと急に怖くなってきた。俺という存在はあいつらにとってどんな風に見えていたんだ、今の俺はもう、


『マーク、大丈夫…?』

「ナマエ、ナマエ…ッ」


名前を呼べば笑って俺を抱きしめてくれた、ダブって、しまう。ああダメ、なんだ。俺が好きなのは、愛してるのは確かにナマエの…っは、ずなのに、!なんで!なんでなんでなんで、俺は、俺は俺は俺は、ナマエが好きで、愛して、愛おしくて、でも、アイツが、


「アイツは…っ!」

『…、もう、いいよ?いいんだよ…?』


よくない、よくないんだ、このままじゃ、俺が俺はお前に傷つけて、俺はそれを見て傷つく、エンドレスなんだ、決めなきゃいけないのに、愛してるのはナマエなのに、脳内をちらつかせるアイツも、全て認めてしまえと甘く囁く。否定しろと金切声で俺に叫ぶ。甘い甘い毒が身を侵す。もう、どうしようもできない俺を向こう側にいる俺が笑ってみていた。





そんな理不尽な俺をアイツは笑った。




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