ボツ
2013/06/15(Sat) 13:40
エレンが巨人に、なった。茫然と、私はただその事実を受け入れられずにじっとエレンらしき巨人を見つめていた。ああ、何と嘆かわしいことだろうか、巨人をこの世から一人残らず駆逐すると私たちの前で高らかに、高言していたではないか、あのエレンが、どうして、
「おい、大丈夫かよ」
『は、はは、そういうジャンこそ、顔真っ青じゃん』
「うるせえな、下らねえ冗談言えるならまだ、」
大丈夫だな、と多分続く、はず、だった。ジャンの声は爆音に掻き消された、嫌な予感がじわりと背後から迫る、瞬時に屋根の上にのぼっていく彼らの後に続き、眼下に繰り広げられている光景に私たちはただただ口を重く閉ざす。まるで地獄を見てるようだ、と思った。あるのかわからない世界を連想させてしまうくらい、奇妙な光景だったのだ。
『…っ、』
周りの声なんて雑音にしか聞こえなくて、全てがスローモーションに感じられる。ああ、この世はなんと無情なんだろうか。
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