「おはよう、イチイ」
「おー…。…?お前ファイか」
「あたり、さすがイチイ」
「サンジュは俺に挨拶なんかしねェし」
「それは可哀想だな。その分俺が愛でてやろうか?ほら、サンジュと同じ顔だよ」

腕を広げてイチイに向かう。
イチイはそんな俺を抱き締めてよしよしと頭を撫でて来た。
同じ身長だけど俺がイチイの頭にぎゅっと抱きついてイチイが俺の腰を抱えてる感じだから体制はキツくない。
身長差あると女の子はキツいんだろうな、やっぱ。

「ギャッ」
「何騒いでんだよ」
「尻触んな」

片方の腕でがっちり腰を掴んでもう片方はさっき頭を撫でてた手で尻を撫でてる。
器用なやつ。そんで変態。
正直ウザイし気持ち悪い。
俺にそんな趣味はない!

「別にいいじゃねェか」
「良くない…っ、サンジュとお前がホモでも俺はホモじゃねェし」
「あー…お前ここで変身するか?フツー…」
「自分の姿なら萎えるだろ。あんまなめんな」
「はァ…なんでこういうマニアックなプレイ求められてんだよ」
「求めてねェよ。俺の優しさ踏みにじりやがって」

そうやってまんまと犯されそうといち早く危険を察知した俺はイチイへと変身して難を逃れた。
バーカと言ってベロ出してイチイの肩を軽く押して離れる。
イチイは参ったという風に手を挙げて降参の仕草をした。

「じゃあな。ちゃんと大学行けよ」
「分かってるっつーの。てめェもあんま変身して遊ぶなよ、俺らがめんどくせェことになんだろ」

イチイの言葉に呆れたように笑う。
変身しなきゃ俺は何にもなれない。
俺にも。私にも。ぼくにも。
ただの紫の塊になる。
擬人した自分を、自分は知らない。
なれない、作れない、形を成さない。
そういう考えが一瞬で駆け巡って俺は姿をイチイからミイに変えた。
そして振り返りイチイの方に呆れた笑いではなく笑顔を向ける。

「それは無理ですの!ではいってらっしゃいませイチイさま!お帰りを楽しみにしていますわ!」

そう言ってわたくしは駆け出しました。
向かう先はナオのところ。
全部、溶かしてもらうのです。
余計なことは考えないように。
どろどろに。

知らないことのが幸せだってあるのです。




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