転校生がやってきた!!
春、大事な人と別れ、新しい人との出会う季節。そんな春がまだ始まりはじめたばかりの今日頃ごろ。
*
「昨日の"VS辛子"みたー?」
「見た見た!!竹じゅん超かっこよかった!」
「えー、やっぱミノのがよかったって!」
「……いや、やっぱ小ちゃんでしょ。」
「あ、先輩おはようッス!」
「おーおはよう、朝から元気だなー」
「武田ー、今日のメニュー変更ありって知ってる?」
「はっ? 聞いてねーって」
ぎゃあぎゃあ色んな会話の響く廊下を全て素通りしていく私達。しばらく歩くと空き教室が続く廊下に来て、それからまた歩くと、今度は遠くの方から叫び声と悲鳴、そして何かが壊れる…否破壊される音が聞こえてきた。
「大丈夫。根はいい奴らだからさ。」
そういったそいつに、まだ何も言ってませんがっと言うと顔が強張っていると言われた。
だってどう考えても普通じゃないじゃん、この音。
いよいよ目的地にたどり着くと、さっきの音がよりリアルに聞こえ流石に余裕がなくなる。待て待て、ここは動物園かこの野郎。
じゃあちょっと待っててねーなんて呑気に言いながら中に入っていくそいつ…つまりこのクラスの担任、銀八に『ちょ、独りにしないでー!!』と目で訴えたがガン無視された。
銀八が教室に入った瞬間、破壊音や悲鳴は無くなった。それでも叫び声と話し声は無くならない。しかも"実はこのクラスに転校生が来まーす"っという声が響いた刹那
「ひゃっふぅううう!!」
「キッタ―――!!!」
「先生ー女の子ー?」
「可愛い?美少女?」
「モデルかなー?!」
等のさっきの5倍ぐらいの叫び声が響く。ごめんなさい、女だけど美少女でも無ければモデルでもありません。だから皆さんそんな期待しないで下さいい。一生のお願いですうう、三百円あげるからァァァァアア。
っと独りブツブツ呟いていると教室の扉が少し開いて、銀八が私に中に入るよう促す。
覚悟を決め、一回大きく深呼吸した後
―バンッ
っと扉を開け、教卓に立つ。静まりかえる教室。やばい力入れすぎたァァアア。はい、不細工でごめんなさい、期待に応えられなくてごめんなさいいいいいい。なんて考えながら独り固まっていると
「「「「きっ…キタ――――(゚∀゚)――――!!」」」」
っと響く教室。何これ、ドラコレ。…じゃない。なんだこれ、何この一時代古い顔文字。まあでもとりあえず喜んでいいってことだよね、そうだよね。
カツカツとチョークで黒板に文字を書く音が響き、騒ぎ声が静まる。そのかわり皆の食い入るような視線が痛いくらい伝わって来る。
ワクワク、ドキドキ。そんな効果音が聞こえるように感じるのは私だけ?それとも皆一緒?
「苗字、挨拶し「そこの小娘ぇええぇえ!!名前、なんてよむアルかー?!」
担任の銀八を遮って大声で叫んできた少女。今から言うよ、なんて思いながらも、何故かすごく魅力的な質問に、私の中の何かが切れた……ような気がする。
気付いたら、私も声を張り上げ叫んでた。
『苗字 名前です!!よろしくお願いします!!!』
転校生がやってきた!
(クックッ中々面白そうな奴が来たじゃねーか)
(久々の上玉じゃねーかィ)
(おーい、そこの沖田高杉コンビ。あからさまにニヤニヤすんな、気持ち悪ィ)
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竹じゅん、小ちゃん、ミノ、対葉、桜屋くん。5人合わせて、辛子でーす。…なんちって。
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