一目惚れしました
―カキーンッ
野球のバッテングの音。今打ったのは2Cの次期キャプテン候補の竹井くん。いやーあの頭、かっこいいね。
―トントン、キュッ
バスケのドリブル、シューズの音。今ボールを持ってる彼女は2Aの山下さん。足長いなー、いいなー。
なんて色々考えながら、私は賑やかな廊下を総悟の後を追いつつ歩く。
しばらくすると人気のない廊下にきて、スパン、スパンという音、そして女性の黄色い奇声が聞こえはじめる。渡り廊下に来たときにはもう見えた、古びた体育館。
「着きやした。」
総悟くんが着くと入り口にたまっていた女の子達が道を開けはじめた。何これ、なんか面白い。なんて思ってると彼は私の手を掴んで中に入っていく。ちょ何、やめてよ。女の子達が睨んでる。
『ちょ、離しなさい総悟く…』
女の子達の間を抜けた時、私が総悟くんに手を離してもらおうと話し掛けた瞬間。ふと、見えた黒髪。
―スパンッ
「一本!」
「「「きゃあああああ土方くんかっこいいい!!!!!」」」
女の子の奇声のような声が体育館中にこだまする。すると総悟くんは、あからさまに嫌そうな顔をする。
「チッ土方め、苗字行きや…苗字?」
そんな中、私はフリーズしていた。
『えっ嘘、あれが土方くん?あの顔は凄いイケメンなのに、何故か朝も昼も夜も飽きずマヨネーズと共に生きる残念なイケメン、マヨラーだって言うの。ていうか何、今の。スパーンっていったね。かっこいい。やばいよかっこいい。あれがあの気持ち悪いマヨラーだなんて信じられな「あのさ、褒めるか貶すかどっちかにしてくんねェか?」
「よォ土方。今すぐ泥ん中沈んで死ね。」
「ならお前は今すぐ底無し沼に埋もれて死ね。」
なんか土方くんと総悟くんが喧嘩し始めた。私はまだ少しパニック。だって土方くんかっこ良すぎだよ。鼻血ブーだよ。惚れちま「丸聞こえでさァ、名前」
「……」
『わっ!』
「土方ァ…何顔赤くしてるんでィ。」
「なっ赤くなんてなってな「土方!今すぐ俺と勝負しろやああああああ!!」
『…あ、銀時くん!』
「あ゙?クソ天パうるせ「え、何?俺に負けるのが怖いの?怖いの「やってやらァァァァアア!」
「…名前!!」
『ん?』
「今から銀さんが土方から一本取るから、見ててね。」
『え、うん!』
*
―スパーンッ
「「「きゃあああああ」」」
『…』
「名前、口開いてまさァ」
いやだって…だって……
「俺に勝ちてェなら毎日真面目に練習しろ、クソ天パ」
「…チッ」
剣道ってかっこいい…! あの死んだ目をした銀時くんでさえ輝いて見えた。まぁやっぱり勝負に勝った土方くんの方が輝いてたけど。
『…総悟くん』
「ん?なんでィ?」
『もし私が、剣道部のマネージャーになったら毎日…』
「剣道してる俺らを見放題でさァ。しかも、誰よりも近くねィ。」
総悟くんはニヤリと笑う。その後ろから試合を終えた土方くんが汗を拭きながらやってっきた。
「というか苗字、お前何しに来『土方くん…』
「なんだ?」
『私……
剣道部のマネージャーする。』
「はっ!?」
「さすが名前ちゃん!そういってくれると思ったよ!!」
「え?!銀時、てめェどういうことだ!」
「まぁいいじゃねーか土方ァ。部活終わった後、苗字がドリンク持ってきてくれるかもしれねぇんだぜィ?」
「えっ」
「そうだぞ土方。試合後、名前ちゃんがタオルを笑顔で渡してきたりしてくれるんだぞ…?」
「…いい」
「「だろ?」」
マネージャー宣言した私を一人置いて土方くんと総悟くん、そして銀時くんの3人で何か話し出す。ちょ、シカトですかこのやろー。
『…無理なら別にいいけ「苗字!」
『はい!』
「話しとく…」
『…え?何を?』
「マネージャーの話、キャプテンに聞いとく。」
『…まじで?!』
「そん変わり
…覚悟してろよ?」
『…うん!』
「"うん"じゃねェ"はい"だ!」
『はいっ』
この時、あたしは知らなかった。ドSコンビがニヤニヤと笑っていたのを…。
一目惚れしました
(剣道と)
(汗かいて頑張る皆に)
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決して土方に惚れた訳ではないってゆー。
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