》笑顔の裏で



「あ、貴女は…」



どうしてこうなった。











昨日、朝から天気予報を見ていると姉が「ヨシタケ!今日は雨よ!大雨よ!これ姉の勘」なんて天気予報士とは全く逆のことを言い出し、俺に向かって折りたたみ傘を突き付けた。拒むと面倒だと思った俺は傘を受け取り鞄にしまった。

今思うとこれが全ての元凶だったんだろう。











放課後、窓から見た景色は朝の晴天に反しどんよりとしていた。そんななか俺は一人帰宅していた。いつもつるんでるあいつらは今日は何やら用事があるそうで学校で別れた。

暫く歩いていたら、なんと姉の予想通り雨が降り出したのだ。その時既に家の近くまで来てた俺はそのまま走って帰る














はずだった。

家の近くにある公園。そこで目に入った光景が俺の歩みを止めた。



「…ん?」



ヒデノリとよく一緒にいる文学少女と同じ学校の制服を着た少女が公園で雨宿りをしていた。その時見た彼女の横顔は








あまりにも悲しげに…でも綺麗に見えた。



ふと我に返った時、俺は彼女に自分の持っていた傘放り投げていて彼女が俺の方に振り向いていた。



「あ…」



小さく情けない言葉が俺の口から漏れて

















それから余り覚えていない。とりあえず彼女に色々言って走って帰ったら…いつの間にか俺は家の玄関に立っていて姉ちゃんが俺を見ながら「予想、当たっただろ?」なんて言ってた。











あの時見た女は俺の夢の中、もしくは妄想の中の人かななんて思いながら俺は今日を過ごしていた。何か凄く恥ずかしいことを言った気がする。もしかしたらヒデヨシやあの文学少女の中二病が移ったのかもしれない。くっ恥ずかしい…!

なんて思いながら何と無く過ごしたらあっと合う間に放課後になった。今日も一人で俺は帰宅。友人達は今日も俺を見捨てやがった。そう思いながら校門に向かった。



「ん?なんだあそこ」



すると、目の前に人集りを見つける。目を凝らしてよく見ると…










「おい、誰だあの美人」

「誰か待ってんのか?」

「何言ってんだ。ここ男子校だぞ?」




昨日の彼女が立っていた。

俺はギョッとする。あの子は俺の夢の中の住民では無かったのか。恐る恐る周り彼女の方へ近づく。周りからの突き刺さるような視線に耐えつつ、小さく声をかけると彼女は俺を見つけ、笑顔を…作る。



「あっあの…昨日はありがとうございました!お陰で風邪もひくことなく無事帰ることが出来て…」

「なんで此処…俺の高校わかった、んですか?」



あっそれはですね…と言いながら彼女はすっと鞄から俺の折りたたみ傘を取り出し、持ち手をゆびさした。



「ここに書いてました。」



あぁ、そういうことか。というか制服でもわかるか。なんて呑気に感心する。「ありがと…」そうお礼を言おうとした時、周りが静か…というか静寂に包まれていることに気付いた。かわりに背中に感じる視線。何を話しているんだ。それは誰だ。聞かなくてもわかる、男子高校生達の心の声。



「本当にありが「あの少し付き合って頂けますか。ここじゃちょっと話しづらいから」



「はい?」っなんて少し情けない声が聞こえたような気がしたが、俺は一刻も早くここから立ち去りたくて



「ちょい走ります」



急いで彼女の手を掴み走り出した。











「はあ…はあ」

「……ふぅ…」



俺達は学校から少し離れた川辺に来た。いつも文学少女達と出会うところより、もう少し先のところ。俺は息を整えながら後ろを振り向く。そこにはまだ手を掴んだまま、彼女は少し苦しそう息をしていた。



「あっ…急に走ってすいま「ふふ、」

「…?」

「ほーんと、不思議な人ですね」

「…それ、褒めてます?」



あはは、と笑うその姿に安心する。気持ち悪がられてはないらしい。



笑顔の裏で



俺にはまだ君は泣いているようにみえた。





H24/07/16




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -