(またここに)


「じゃあもう行くよ。ありがとう、伊作君。」

雑渡さんは別れの時にまた、とか今度、とか絶対に言わない。次無事に会えるかわからないから。そんなこと僕にもわかっている。だから僕も雑渡さんと別れる時にまた会えるか、ということは聞かない。聞かないんじゃない、怖くて聞けないんだ。でも聞かずに待ち続けるのも同じように怖かった。今日、僕は勇気を出して聞く。

「雑渡さん、あの…また会えますよね?」

雑渡さんは困ったような顔をする。

「伊作君、それは…」
「わかってます。でも、僕に必ず会いに来てください!」

雑渡さんは驚いているんだろう。今まで僕はこんなことを言ったことがなかったから。でもちゃんと答えをくれた。

「必ず会いにくるよ、君に。」

僕は怖かった。雑渡さんの口から、会えるかわからないなんて言われてしまったらどうしたらいいのだろう。

「じゃあ、また今度。」
「僕は待ってます。ずっと!」

すぐに消えてしまう雑渡さんに僕の声は届いただろうか。届いていなくても、僕は構わない。僕はいつまでも待つことができる。雑渡さんが必ず会いに来ると言ったから。



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