(派手にね)


恋愛とはもっと派手なものかと思っていた。少女漫画とまではいかなくとも、平凡な日常にある小さな非日常だったりとか。ましてや雑渡さんのような年上の人と付き合っているのなら。


「君は敵の忍者と付き合っていて地味だと言うのか」
「そんなことを言ってるんじゃないんです。僕はそういう危ないスリルを求めてるんじゃなくて…もっと普通の…」
「例えば?」
「僕のことが好きな人がいて、雑渡さんとその人が僕を取り合うとか、」

少女漫画のセオリーを考える僕の顔に雑渡さんの顔が近づいてくる。反射で目を瞑る。すると唇に軽く触れる唇。

「…伊作君は子供だなあ」

僕は雑渡さんの言葉に膨れる。なんだ子供って。確かに雑渡さんと比べたら子供かもしれないけど、これでも忍術学園の最上級生なのに。それにキスで話を反らしたつもりなのか。第一キスまで地味じゃないか。そんな僕の気持ちを感じ取ったのか、雑渡さんはまた僕にキスをする。さっきより長く、深く。

「大人のキスだよ。帰って…」
「帰ってきたら続きをしましょう、でしょ」
「…」
「どこかで聞きました。その台詞…それに続きってなんですか?」

そんな子供騙し。結局は子供扱いじゃないか。それに僕はそんな話をしていたんじゃない。

「大人をからかうものじゃないよ」

僕の話をそらしておいて何を、

「本当の恋の証だよ。地味なのはね」
「え?」

聞き返した時にはもう雑渡さんはいなくなっていた。いつもそうだ。殺し文句みたいな事を言って、消えて。


でも雑渡さんは本当の恋と言った。今さら顔が赤くなる。もう地味な恋でもいいかな。あの人が言ってくれた言葉が僕の頭の中で何度も繰り返される。あんな一言で考えを変えるなんて僕はやっぱり子供かもしれない。



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