(過去形)

私はいつも後悔ばかりだ。今回もそう。君を傷つけていることはわかっていたのに、君と私はそんなことでダメになってしまうような関係ではないと思っていたから、さらに君を傷つけた。もし心が離れそうになっても、すぐに戻れると思っていたから、君を不安にさせた。
結局それは私の君に対する甘えで、君を傷つけていることの言い訳だった。私は君にどれくらい寂しい思いをさせて、傷つけただろうか。君より大事なものなんて、何があったんだろうか。



「最近冷たくないですか」

そう言った伊作君の声もまた、冷たく私の耳に残っている。

「なんでそう思う」

私は伊作君の顔も見ずに言った。後ろめたさを感じていたし、伊作君に甘えてもいたから。明日には伊作君は笑顔だと、そう思っていたから。伊作君はそれ以上何も言わなかった。



限界だ、と私に伝えた君は笑顔じゃなかった。今日は笑顔のはずなのに。




そうやって突き放されても私は諦めきれなかった。馬鹿だろう、自分で蒔いた種なのに。
もう一度話がしたいと、手紙で呼び出した私は、伊作君を怒らせただろうか。それでも伊作君は来てくれると思っていた。私はまた伊作君に甘えていた。





待ち合わせの場所に表れた君は私に気づくと立ち止まった。臆病な私は君に駆け寄ることもできなかった。
この距離が離れてしまった二人の心の距離なんだろうか。

「もう一度私の隣にきてくれないか」

ずっと考えていた気の利いた言葉は全く出てこないで、出てきたのは私の自分勝手の本心だった。遠くて、君の表情は見えなかったから、こんな無神経なことを私は言えたんだろう。
だから、私に背を向けて去っていく君を、私はもう引き止められなかった。





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