(いいわけ)

好きだと言われたら逃げたくなる。

好きだと言われるまでは満更でもないし、なんとなく相手に好意を持っている。でも好きだ、とはっきりと相手の自分に向けられている好意を見せつけられると急に相手に興味を持てなくなる。今までの相手に感じたときめきも嘘のように無くなって、残るのはただ相手に対する冷めた感情だけになった。それだけでなく、相手を気持ち悪いと思ってしまうことだってある。
私は勝手な人間だ。わかっていてもなぜかそうなってしまうからしょうがない。



七松先輩は私のことが好きなんだと思う。いつものように今の所では私も七松先輩には好意を持っている。しかしこの感情は相手に流されているだけで、私の本当の気持ちでないかもしれない。それは私にもわからないことだ。
だから私は先輩に好きだと言ってほしかった。なのに先輩はなかなか私のことを好きだとは、それだけは言わなかった。他の、好意を表す言葉や態度や行動は私に向けるのに。せっかちな私は焦らされているような気がして、それに対して少しイライラしていた。そんな私は何を思ったか、普段の自分には考えられないことをしてしまった。



「七松先輩は私のこと好きですか」

私はただ、七松先輩の口から私のことが好きだと言わせたかっただけだ。そうすれば私の本当の気持ちがわかるから。
私の唐突な質問に驚く様子もなく、先輩は答えた。

「私は好きだよ。私は、」

委員会のことを尋ねたときの返答のようにあまりにも普通だったから、私は本当にちゃんと考えて言っているのかと疑った。疑いの目で七松先輩を見ていると、先輩はまた口を開いた。

「じゃあさ、」

先輩は私に向き直り、私の目を見つめた。

「滝夜叉丸は?」

いつものふざけた先輩の瞳とは違う瞳が私を見ていた。本当のことを言ってほしい、と言っているようだった。
そうやって真剣な目で見つめられると恥ずかしくなる。これじゃ私の方が七松先輩のことを好きで聞いたみたいじゃないか。私が先輩のことを好きか?逆に聞かれても、好きだって言われた後にときめきを感じるのは私には初めてのことだから、わからない。




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