(貢求ぐ)


雑渡さんは僕が欲しい物をくれる。僕は学生だし、お金もそんなに持っている訳ではないから、欲しいものがタダで手に入るのは嬉しい。でも僕は正直な所、複雑な気持ちでそれを受け取っていた。。
人から物を貰うのはなんだか外堀を埋められているみたいで前々から苦手だった。他人に物をあげようとするのは、見返りを求めているからだろう。好きな女の人に男が色々貢ぐのは、やっぱり付き合ってほしいだとかの見返りを求めているんじゃないか。雑渡さんが物をくれるのも僕に見返りを求めているからなのかもしれないと、少しそう思っている。

「これは伊作君へのプレゼントなんだけど」

それは僕が本当に欲しいものじゃない。雑渡さんにとっては僕の為にしていることなんだろうけど、僕にはそれよりほしいものがある。しかしそれは物じゃない。雑渡さんはそれを誤魔化そうと思っているのかもしれなかった。僕との距離感を計りかねているんだ。


「ありがとうございます」


僕と雑渡さんの距離は物で埋まってゆく。そんなもので固められた関係は脆い。
それでも僕は雑渡さんからプレゼントを受け取ってしまう。僕も雑渡さんとの距離感がわからないから。でもこの物のやりとりが終わった時、僕たちの関係も終わることはわかっていた。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -