(わかりにくいんだよ)

「あ、久々知くんだあ!」

俺を見つけた斉藤は駆け寄ってくる。俺は目の端にだけ斉藤を入れ、絶対にそちらを見ない。斉藤は俺の横に立つ。

「ねぇ、付き合ってくれないかなー?」

俺は斉藤と目を合わせず、隣を通り過ぎる。そう言っていつもあいつは俺をからかうから。男の俺に付き合ってとか、好きだとか。始めはよい先輩後輩の関係だと思っていたのに、あいつが俺をからかい出してからはまともに話にくくなってしまった。何故斉藤は俺をからかうのか。全く心当たりはないし、いくら考えてもわからなかった。
俺より年上だから、俺が怒らないと思っているんだろうか。正直俺はそういうことをされて、迷惑だった。どうせ斉藤はモテるから誰にでもああいうことをしているのだ。行き過ぎると勘違いをしてしまう、そういう人もいるだろう。俺は断じて違うけど。
斉藤は会う度にそういうことを言うものだから、俺は斉藤と顔を合わせるのが億劫になっていった。委員会までも。

委員会の日は憂鬱で、いつもより俺の顔は暗いんだろう。委員会の最中はまだいい。斉藤の視線は感じるものの、話しかけてはこないから。問題は終わった後だった。委員会が終了すると、斉藤は俺に近寄ってくる。

「兵助くん!」

いつもの笑顔だった。くのいちが言うには曇りのないかわいらしい笑顔らしいが今の俺にはそうとは到底思えない、邪悪な笑顔だった。何度迷惑だと言おうとしただろうか。しかしこの笑顔を見てしまうと何も言えなくなってしまう。しかし今日はそんな斉藤からは目を背ける。

「なぁ、いい加減にしろよ」
「何を?」

俺のいらだちを察知してか顔色は伺っているみたいだが、こいつはあくまでもそれを認めないつもりらしい。

「俺をからかってるんだろ。好きだとか、付き合ってだとか」
「違うよ、兵助くん」

その声が真剣で、びっくりして思わず斉藤を見てしまう。斉藤と目が合った。いつになく声と同じで真剣だった。

「僕は本当に兵助くんのことが本当に好きで、」

そう言って斉藤はぽつぽつと話し始める。俺は斉藤の話を真剣に受けとるべきか決めかねていた。斉藤の話の内容は俺にはあまり信じられなかったから。
斉藤は俺のことが好きだと言う。好きなやつに正直な気持ちを伝えたくて、直球に感情を表現していただけだと斉藤はそう言う。

「そんなこと本気にできると思うか?」

じっと斉藤の顔を見つめる俺に、今度は斉藤が目を合わしてくれない。斉藤の言ったことが本当なのか、俺には結局わからなかった。
ただいつもの斉藤と違ってやけに真面目だということだけは、うつ向いた斉藤の赤く染まった頬を見てわかった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -