(そうだったとしても)

「2012年になったら人類は滅亡するんだ」

伝七は急にそんなことを言い出した。何冗談言ってるんだよ、と言おうとしたが伝七の顔を見ると暗い。とても冗談を言っているとは思えない目で僕を見ていた。

「何?急に」
「昨日テレビで見た」

その番組を僕も見ていた。2012年に人類は滅亡するだとか言っていたが、僕はあまり本気にしなかった。しかしこいつは信じているらしい。そして本気で落ち込んでいる。さっきからため息をついていたのはそのためか。

「あと3年ちょっとしか生きられないなんてさ…」

こいつ、面白い。伝七の言っていることを否定してやろうかと思っていたが、辞めた。それより面白いことがありそうだった。

「せめて18までは生きたかった」
「なんで」
「だってさ、結婚できるだろ。お前と」
「はぁ?」

思わず伝七の顔を凝視してしまう。こいつは何を言っているんだ。結婚って…。そんなに人類滅亡がショックだったのだろうか。自分がどんなに間抜けで馬鹿なことを言っているのかわかってないんだろう。

「男同士は結婚できないだろ」
「人類滅亡の時にそんなこと関係ないっ」

僕を見つめる伝七の目は本気だった。僕はもう笑いを堪えることができない。

「ははっお前ばか?」
「なんでだよ」
「人類は滅亡とかしないよ」
「根拠は?」
「ない。なんとなく」

僕は普段伝七の口からは聞くことのできないことを聞けて満足だった。結婚か…。やっぱり馬鹿だな、伝七は。
伝七はやりきれない顔で、するかもしれないだろと呟き、またため息をついた。まだ不安らしい。伝七の中ではもう人類滅亡のシナリオは出来上がっているんだろう。面白いからこれ以上は否定しないでおこう。
しかし僕も完全に人類滅亡を否定する訳ではない。もしかしたら2012年に本当に人はいなくなるかもしれないとも思っている。
でもいいんだ。人類が滅亡しても、最期に伝七と一緒にいれたら、別に。




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