(からかい半分、)

「ねえ、手繋ごうよ」

私はたまにそんなことを滝夜叉丸に要求する。裏山まで走りに行った帰り、今日は私の気分でゆっくり歩いている。

「いやです」
「なんで?」
「だって、下級生達がいるじゃないですか」

滝夜叉丸は後ろにいる下級生を指差す。見ると皆お疲れのようで、足取りは重くトボトボといった感じだ。多分私達のことは見ていないだろうが、滝夜叉丸のことだからこの状況で手を繋いでくれるはずがないことは本当はわかっていた。

「いいじゃん!別に」
「私が恥ずかしいから嫌です」

滝夜叉丸は後輩の前で私がデレデレするなんてプライドが許さない、とかそんなことを思っているだろう。

「ケチだなぁ」
「けち?私が?」

怒らせるのも私の思惑通りである。滝夜叉丸がケチだなんて言われて黙っているはずがない。
滝夜叉丸はフンッと鼻を鳴らすと、私の両手を取りギュッと握った。滝夜叉丸は渾身の力で握っているつもりなのかもしれないが、正直私にとってはへでもない。私は顔がにやけるのを堪えるのに必死だ。しばらくすると握っていて疲れたのか、滝夜叉丸は突然手を放した。

「これでいいですかっ!」

そう私に向かって言うと、滝夜叉丸はずんずんと先に行ってしまった。

「これ繋いだんじゃなくて握っただけだよ」

少し不満だ。ちゃんと繋いで欲しかった。でも滝夜叉丸はそんな私の言葉を無視して先を歩いている。まぁ手に触れてくれたからいいか。
最近の私は滝夜叉丸の扱いが上手くなってきたと思う。とぼけたフリをして滝夜叉丸をからかうのが楽しくなってきた。すごくいい、可愛い反応をしてくれるから。滝夜叉丸は多分気付いてないんだろうな。
ふと、手を見ると握られていた所が少し赤くなっていた。滝夜叉丸の手もそうなっているのかと思うと、なんだか微笑ましくて笑ってしまった。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -