(It is amazed.)
クラスメイトが落ち込んでいる。ついこの間にくのいちの彼女が出来たと喜んでいたのに。どうしたのだろう、気になって聞いてみたらこの間出来たばかりの彼女にフラレたらしい。1週間強の交際期間で。
休み時間、落ち込むクラスメイトをなんとか元気付けようと周りは飲みしようだとかオールしようだとか。そんな集団を横目に見ながら僕は三郎に聞いてみる。
「ねぇ、三郎。1週間の付き合いってどう思う?」
「私はそういうのもありかなと思うけど」
意外だった。三郎なら長く好きでいれる人と、と言うと思っていた。なんかモヤモヤする。
「…なんで?1週間じゃ恋人らしいことも殆どしないまま別れるってことだろう」
「1週間のうちに嫌な所が見えて別れたくなったんだろうね」
「すぐ別れたいと思う男となんで付き合うのかわからないよ」
僕はムキになっているんだ。三郎が短い交際もありだと言ったから。知らない女の子のこともクラスメイトのことも悪く言っているような気がする。
「僕だったら、」
「僕だったら?」
しまったと思った。僕の口から零れた言葉の先を促すように三郎が繰り返す。三郎は僕の目から視線を外さない。この先を僕の口から言わせたいようだ。
「雷蔵だったらどうなの?」
三郎の顔がなんだかにやけている。悔しい。でも本当は、三郎は僕と1週間の付き合いでもいいのかということが気になってしょうがないんだ。三郎は無条件で愛をくれる。なのにさっきの三郎の一言だけで本当は僕ばっかりが好きなような気がしてきた。不安になる。
「…私だったら本当に好きな人とじゃないと嫌だな。雷蔵とじゃないと」
「へ?」
「私は…雷蔵が別れたいって言うのなら別れるよ。でもそれは好きだからだ。私は0からやり直すよ」
三郎はまだ僕から視線を外さない。頬が熱くなるのを感じる。三郎は僕の心が読めるんじゃないか?僕が三郎に言ってほしかったことは、全てさっき言われてしまった。それに、これは告白みたいな…。なんか負けた気がする。でも僕は絶対、
「だから雷蔵は?」
「僕は…僕も、三郎とじゃないと嫌だよ。でも僕が三郎と別れたいとか言うわけないじゃないか!絶対に」
僕は三郎の言葉を否定しただけだ。三郎があり得ないことを言うから。でも三郎を喜ばせただけかもしれない。
「じゃあ私たちは大丈夫だな」
三郎は僕の顔でにやけながらクラスメイトに視線を移す。彼はまだ立ち直れていないようだ。