(馬鹿ばっか)


あいつは融通が利かないから、真面目すぎるから損だ。教室の掃除をしている伝七の背中を見ながらそう思った。昨日も伝七は掃除をしていた。誰かが忘れたのか、それとも頼まれたのか。何れにせよあいつは損をしている。

「ねぇ、伝七」

振り向いた伝七はあからさまに嫌な顔をした。

「なんだよ」
「掃除好きなの?」

僕の口からは見当違いの言葉が出てきた。聞きたいのは何故昨日も今日も掃除をしているのかってことなのに。

「別に」

伝七は僕を見るのを辞め、掃除に戻ってしまった。




次の日も伝七は掃除をしていた。

「伝七」

伝七は振り向かない。

「あのさ」
「…」
「なんで一昨日も昨日も今日も掃除してるの?」
「…頼まれたから」

それきり伝七は何も言わない。




次の日は伝七は掃除をしていなかった。
今掃除している連中が僕の姿を見つけると、怯えるような表情をして視線を外す。
伝七はあいつらに頼まれても断ることは出来るんだ。でも誰も掃除をしないってことが嫌なんだろう。忍たまの模範として生きたいやつだから。そんな伝七も、伝七はいないだろうと思いつつも見に来てしまう僕も馬鹿だ。





昨日まで掃除を僕に頼んできた連中はなんだか僕に怯えているようだった。何故だかなんとなくわかっている。
今日兵太夫を見かけたら、顔に絆創膏が貼られていた。僕の為に何をしたのか兵太夫は何も言わない。そんな兵太夫も、兵太夫にお礼が言えない僕も馬鹿だ。






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