(運命の人)


皆が僕に話を聞いてほしいって言うから、僕のことが必要だって言うから僕はそこにいただけ。話を聞くのは苦痛じゃない。でもたまにむなしくなる。皆は僕のことをどれくらい知っているのか。僕が今死んだら僕の本質を何一つ知らなかったってことに気付いてくれるだろうか。それとも上辺だけの僕を掛け合わせてこんな奴だったと話をするんだろうか。
自分の話をするだけして僕の意見を聞かない人。相槌がいらないなら人形でも相手にしていればいいのに。申し訳ないという気持ちで僕に問いかけているんだろうけど、僕の返答には上の空。うんざりなんだ。でも僕はそんなこと言えないから。そんな自分にもイライラする。

あなたもそういう他の人と同じだと思っていた。僕には自分の話を聞いてほしいんだと。僕のことは本当は興味がないんだと。でも、

「伊作君のことを知りたいんだ」

そうやって僕のことを本気で知りたいと、雑渡さんは僕の目を見てちゃんと言ってくれた。初めてだった。そんな人は。
だから雑渡さんは僕の運命の人。
それだけのことでって思われるかもしれないけど、僕は雑渡さんの言葉に本当に救われたんだ。雑渡さんの前では話を聞いてくれる善法寺伊作でいなくていいから。

「マンドラゴラって言うんですこれ。引き抜いたら悲鳴をあげるっていう伝説があって、」
「うん」
「それを聞いた人間は発狂するらしいですよ」

そんな話を雑渡さんは笑顔で聞いてくれる。僕が好きなものやことは雑渡さんが一番知っている。他の人に理解なんかしてもらえなくてもいい。雑渡さんだけいてくれれば。





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