(もう少し大人になりたい)


今日は雑渡さんの背中が泣いている。落ち込んでいるんだろう、そんな気がする。いつもは僕と並んで歩いてくれるのに雑渡さんは前を歩いているから。でも僕は理由を聞かない。雑渡さんは誰かに励ましてもらうことを望んでないんだろうと思う。僕が励まして気が楽になるような簡単なことでは無いんだろうし。僕はわざとらしい励ましなんてしたくない。
でも雑渡さんをそのままにもしておきたくない。僕が落ち込んだ時は何も言わずに側に居てくれる雑渡さん。僕ばっかりいい思いをするのは嫌だ。僕に出来ることは何か。そうさっきから考えているんだけど、いいことが思いつかない。僕と雑渡さんはこんなに近くにいるのに、雑渡さんの気持ちを汲んであげられない。不甲斐ない。汲んであげられないから、下手に言葉はかけない。僕は雑渡さんに駆け寄り、手を取る。あまり不自然ではない笑顔で。

「手、繋いでもいいですか?」

雑渡さんは何も言わない。雑渡さんの沈黙は肯定。僕は手を繋ぐ。僕にはこんなことしか出来ないけど、雑渡さんの気が少しでも晴れればいい。包帯の下の顔が微笑んだような気がする。
雑渡さんには笑っていてほしいと思うけど、辛い時もある。そういう時に頼ってほしいのは好きだからです。



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