(ふわふわする)


手を繋ぐ。そんな恋人としては初歩的なことが出来ないなんて。一緒に並んで歩く兵太夫の手と僕の手は、今にも触れ合いそうなのに少しだけ手を動かすことが出来ない。なんでそんな小さい勇気が出ないのか。両思いなのに。手、繋ぎたい。そう一言だけ言えたらいいのに。
何だかそわそわしてしまう。あまり兵太夫の顔を見れない。

「何だよ」
「何でも」
「…」

機嫌を損ねてしまったような気がする。兵太夫の顔色を窺うのは釈だけど、こいつを怒らせるのは得策じゃない。でも謝りたくはない。そんな葛藤をしているうちに兵太夫は溜め息をつく。

「あのさ、」

声には苛立ちが混じっていた。

「手を繋ぎたいんだったらはっきり言いなよ」

兵太夫は僕の手を強引に取り、繋ぐ。僕はあっけにとられてそれを見ていた。僕ができなかったことをこんなに簡単にしてしまうなんて。何だか悔しい。
兵太夫は恥ずかしいのか、歩く速度が速くなって僕は引っ張られている。いや、こいつに限って恥ずかしいなんてないかな。僕は手を繋いだことが嬉しくて何だか笑ってしまう。

何か思いついたように兵太夫が振り向いた。

「こっちがいい?」

そう言った兵太夫は得意の意地悪そうな笑顔をして、繋ぎ方を恋人繋ぎに変えた。

「もう!からかうなって!」

そう怒ってはみたけど、繋いだ手は離したくない。兵太夫も離さなかった。同じ気持ちだといいと、そんな女の子みたいなことを考えている自分が何だか好きだ。



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