(梅雨)


雨が降る音が遠くで聞こえる。雨の日は憂鬱。新しい雨具を使うのを楽しみにするほどもう子供じゃない。髪の調子がよくないのも雨のせい。不快指数が高いのも雨のせい。僕と兵太夫の会話がぎこちないのも、全て雨のせい。

「何かあったんだろ」
「別に何も」

嘘じゃない。特別何かがあった訳じゃない。ただ今日は雨が降っているだけ。

「あっそ」

それっきり兵太夫は黙ってしまった。
本当は無理矢理にでも抱き締めて本音を聞いてほしい。いつも好きなのに嫌いっていったり、寂しいのに寂しくないって言ってしまうのは強がりだ。好きであれば好きであるほど、本当の気持ちを出せなくなる。抱き締めてくれたら、素直になれるのに。今の僕には聞かないでいてくれる優しさはほしくない。そんなには大人になれないから。
雨の音が強くなった。素直になれない僕を責めているようで、嫌いな、不快な音。隣に座る兵太夫に触れそうになる。でもそこから近づけない。昨日は何も考えずに触れられたのに。
明日晴れてくれたらいいのに。晴れたら、またいつも通りの僕になれる。でも明日も雨が降るんだろう。梅雨は嫌いだ。





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