(あの子へ)


僕の最近の悩みは、好きな女の子に好きな人がいたこと。それが僕だったらどんなにいいか。彼女が好きな人は僕よりかっこよくて性格もいいやつ。僕は怖くなって話しかけられない。だから僕はあの子が振り向くようないい男になってやろうと思う。でも、あの子は僕のことなんて知らないんだろう。そんなでも、なんて言って言い訳する自分に自己嫌悪したり。
そんな傷心の僕に追い討ちをかけるように嫌なことは続く。その原因はい組の作法委員、笹山兵太夫。何かあれば僕の揚げ足とり。あいつは僕のことが嫌いなんだろう。じゃあほっといてくれと。今の僕には言い返す気力なんてないんだ。



「伝七!」

ああまただ。話しかけないでほしい。最近はあの子のことと、兵太夫のことしか考えていない気がする。いっそのこと兵太夫のことだけ考えていけたらいいのに…なんて。

「僕に話しかけるなって」
「そう言われると話しかけたくなるだろ」

傷心の僕にそういう言葉をかけるのはやめてほしい。傷付いた心は恋に落ちやすい。計算された優しい言葉より、さりげない言葉に心動かされる。僕は兵太夫のことが気になっているんだ。だから話しかけないでほしい。兵太夫なんかを好きになりたくない。悔しくて。

それでも、段々と僕があの子のことを考える時間は少なくなっていった。前の恋は諦めたわけでも終わったわけでもないけど、ついこの間まで好きだったはずのあの子のことは霞んでしまっている。大して好きじゃなかったとか、望みのある恋にいこうとかそんなんじゃない。あの時はあの子のことが本当に好きだったのに、今は兵太夫がその位置にいる。それだけ。あの子を振り向かせようと奮起していたことも、何だかどうでもよくなっていた。不思議だけど、今は兵太夫のことが好きなんだ。





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