(EDTA)
私は素直じゃないし、不器用だから、人に気持ちを伝えるのは苦手だ。でも七松先輩にはちゃんと言葉で言わないと思いが伝わらない気がするから、七松先輩の前では私は素直でいる。
「好きです、」
好きだという言葉は二人きりになった時の合言葉のようになっている。七松先輩には素直に気持ちを伝えなければと思って。
「うん、私も」
七松先輩はいつもの笑顔で応えてくれる。私の好きな笑顔で。でも今日はその笑顔に何か違うものが混じっているような気がする。
「…無理してない?」
「え?」
「私が知ってる滝夜叉丸は簡単に好きだって言わないよ」
私は七松先輩の口から出た言葉にどう答えたらいいのかわからなかった。でも私は何故か涙が出そうになる。先輩が言うように私は無理していたのかもしれない。好きだという言葉に偽りは無いのに、本当は口に出すのに戸惑いがあった。本当の私は素直じゃなく、不器用なやつだから。でも七松先輩に嫌われまいとして、そんな自分を出せないでいた。
七松先輩は私の頭に手を乗せて撫でてくれる。いつも下級生の髪をぐしゃぐしゃにしている乱暴な撫で方じゃない。今は優しい。
「滝夜叉丸が言いたいことは言葉にしなくてもちゃんと伝わってるから」
七松先輩がすごく大人に見えた。私の全部を分かってくれてるような気がして。素直じゃなく、不器用な、そして意地っ張りな私も全て先輩は好きでいてくれる気がして。
「私は自然体な滝夜叉丸が好きだな」
そんなことを言ってくれるのは先輩だけだ。ありのままの私が好きだと言ってくれるのは。嫌な所も全て好きでいてくれるのは。
先輩の嫌な所は思いつかないけど、私もありのままの先輩が好きです。
でも少しだけは七松先輩の前で猫を被ってしまうのは許して下さい。