(何も変わらないのに)


――――片想いは好きだ。一番、好きな人のことを好きでいられる時だから。
授業中、振り向いて私にわからない所を聞く君の為に先生の話をちゃんと聞いたり、プリントを回す時に手に触れてみたり。些細なことが、私にはとても嬉しいこと。毎日が楽しい、授業を受けるのが楽しい。目が合ってドキドキしたり、一言二言話しただけで嬉しく感じる。だから片想いの期間が好きだ。

そう思えていた時は幸せだった。
最初は確かに楽しかった。でも段々と雷蔵が私の名前を呼ぶ度に苦しくなっていった。話す度に私の嫌な所を見せているようで、嫌われないかと考えた。雷蔵のことが好きになっていくにつれて、私以外の人と雷蔵が話しているのを見るのが嫌になった。
雷蔵が休みの日はホッとした。今日は雷蔵に会わなくていいんだ、と。なんで私はこんな気持ちになるのだろう。雷蔵のことが好きなのに。その想いはあの時から変わってないはずなのに。
もう私の雷蔵を好きだ、という気持ちは真っ直ぐではなくなっていた。いっそのこと好きでなくなれば、こんなに苦しい気持ちにならないだろうに。でも雷蔵のことは嫌いになれない。それほど好きなんだ。

「三郎ー」

雷蔵が私を呼ぶ声が聞こえる。顔を見なくても声だけでどんな顔で私を呼んでいるのかわかってしまう。
片想いが好きだなんて嘘。もう切なさに耐えられない。私は君の背中を見るのすら辛い。
机に突っ伏して雷蔵の声が聞こえないふりをした。目を瞑っているのに、浮かない顔をして前に向き直る君が見えた。





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