(潰されたきっかけ)


目を逸らされるのはその人が自分に好意を持っているから。
今、君はそう言った。

「らしい。」
「へぇ。そうなんだ」

僕はそう言うしかなかった。さも興味がない、といった風に。
僕の好意にいつから気付いていたんだ。君は本当は心の中で僕のことを笑っていたんじゃないのか。

ずっと前から好きだった。ずっと前から、なんて安っぽい使い古された言葉かもしれない。でも本当に。下級生だった頃からずっと。僕は君の行動の一つ一つに一喜一憂して。そういうのが楽しかった。別に思いを伝えられなくてもよかった。三郎の側にいて、今三郎のことが好きだと感じることができればそれで。一番君の側にいたのは僕で、一番親しいのも僕。そこにいるのは君が親友として見ている僕。
でも僕は君を親友と見ていなかった。だから親友として不自然なことをしてしまう。ただひとつの、親友という擬態の綻び。
それは、君から目を逸らしてしまうこと。僕は君の目を見続けられないんだ。目を見て話をしたくても、恥ずかしくて逸らしてしまう。親友を相手としてはおかしく、好きな人を相手としては恐らく正しいこと。でも、そんなこと今に始まったことじゃない。三郎を好きになってからずっとだ。それなのに今更君はそんなことを言うのか。

君はずるい。僕はもう君から目を逸らすことができない。僕は別に気付いてほしくて目を逸らしていた訳じゃない。
君は僕の気持ちに気付いているんだろう?僕に好かれてどう思っているんだ?今のは目を逸らしてばかりいる僕への牽制のつもり?このままでいたい僕に先に進め、と。君はそう言いたいんだろう?聞きたいことは心の中だけで増えていく。でも僕はこの関係を変えるつもりはない。君は僕に僕の顔の仮面を被って、僕は君に親友という仮面を被る。もう、それでいいだろう?

「それよりさ、」

三郎が一瞬切なそうな顔をした。でもそれは僕の気のせい。





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