(後悔なんて)


僕は馬鹿だ。三郎が僕に本気で怒るはずがないと自惚れていたから、三郎を傷つけるようなことを平気で言ってしまった。僕が悪いんだ。でも今さら謝れなくて。最初はいつものように三郎が折れて仲直りできるだろうと思っていた。でもそんなことはなく、僕は謝る機会を失ってしまった。


「三郎が雷蔵に怒るなんてよっぽどだろ。」
「うん…」
「やっぱ雷蔵から謝らないと」

教室では元気のない僕を心配して竹谷が声をかけてくれる。でも僕はうん、と相づちを打つだけだ。僕も謝りたいと思っている。でも三郎がその機会をくれないんだ。三郎は僕を避けているから。長屋でも僕が寝てから帰ってきて、僕が起きるより早く出ていく。こんなことになるなんて考えたことなかった。僕は三郎のことが好きで、三郎は僕のことが好きで。そうだと思っていたのに。

僕は三郎と顔を合わすのが怖くなっていた。駄目だとわかっていても、自然と三郎を避けて行動してしまっている。そんな自分に自己嫌悪になりながら、廊下を歩いていた。

前の角を曲がって来る三郎が見えた。逃げ出したくなる。三郎と目を合わすのが嫌で下を向いて歩く。三郎は僕の横を通り過ぎてゆく。僕のことが見えていないといったように。僕は駄目だ。三郎が僕のことを見てくれていないと考えたら胸が苦しくて。

僕は振り返り、三郎の背中に向かって叫ぶ。

「三郎の馬鹿!」

三郎は振り返らなかった。


僕は本当は三郎がいないと何もできないんだ。お昼ご飯のメニューも決められないし、図書室で借りる本も決められない。でも、もう戻れないんだ。僕は三郎のことが好きで、三郎は僕のことが好きで。それだけでは僕たちは一緒にいられない。

いつの間にか三郎の顔は僕とは違う誰かの顔になっていた。僕もいつの間にか三郎と手が触れ合っても何も感じなくなっていた。




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