ねぇ、音楽室の噂、知ってる?

何々??

音楽室のベートーベンの絵、わかる?

あぁ、あの黒板の上に掛けてある絵?

そう、それ!
その絵のベートーベンがね・・・動くんだって。




放課後、ネズミは紫苑の教室に行くため、
中庭の廊下を歩いていた。

そこで何気なく、中庭を見てみると
紫苑がいた。

声をかけようとしたとき、横にいた男に気づいた。
男は顔を真っ赤にしていて、
対する紫苑はいつものようににこにこと笑顔で
話を聞いていた。

「お、俺と・・・付き合ってください!」

「うん、いいよ?どこについていけばいいの?」

「え、い・・・いや、そうじゃなくて・・・。」

いつもは紫苑の天然のせいで会話のキャッチボールができず、
どうしたものかと思っていたが、こんな時天然ナイス!と
思う。

そんな光景を廊下で見ていると
話がよくわからなくて飽きている、という顔だった紫苑が
自分に気づき、男をおいて走ってきた。

あぁ・・・どんまい、あんた。

と同情したくなるくらいの置き去りをした本人は
まわりに花が咲いている笑顔でとことことやってきた。

「ネズミ!何で呼んでくれないんだ。君を探しに教室からでたんだぞ?
そしたらあの人がいたから、話してたんだ。」

いや、話していたというよりは・・・もっと大事なシーンだったと思う。
相手から見れば。

まぁ、俺も女子から見ればそうなんだろうが。

「それより、沙布が今から音楽室に行くぞって言ってたぞ?」

「音楽室?なんで?」

「さぁ・・・?ベートーベンが何とかって・・・。」

「ベートーベン・・・・?」

「うん。・・・あ、そうだ!橋本さーん。」

はしもと・・・?
あぁ、さっきの男か。

「僕たちもう行くので、また今度お話しましょうね!」

・・・・は?
紫苑、あんた本当に怖い・・・。
告白してたのにそんな態度とられたら精神的にダメージくるな、絶対。

でも、まぁ・・・それだけ他のヤツに恋愛感情が一切ないってわかるから
嬉しいんだけどさ。

俺は紫苑から手をひっぱられながら
幸せなんだな、と思った。


「あ、しおーん!!」

音楽室の廊下を手を引っ張られながら走っていると
エリ・・・沙布の声がした。

見ると紫苑に向けて手が千切れるくらい振っている
沙布と頭をかきながら待っているイヌカシがいた。

「ごめんね、待った??」

紫苑が音楽室につくと沙布たちに申し訳なさそうに言った。
もちろんそんな紫苑に沙布は首をふる。

「そんなことないわ!ね、イヌカシ?」

「10分も待ってたじゃないか。」

イヌカシの素直な返答に紫苑は本当にごめん、といった。
沙布はごほん、とひとつ咳をした。

「じゃあ、もう一度説明するわね!
今回はベートーベンの絵が本当に動くのは本当なのか、調べてみましょーう!!!!」

・・・は?
そのために俺や紫苑を呼び出したのかよ・・・面倒だな・・・。

「俺はそんな用事だったら帰るぞ。」

と言おうとした時、紫苑が凄く動揺したように言った。

「沙・・・沙布?そ・・・そんな、ひ、非科学的なことが・・・
あ、るわけが・・・。」

「何、紫苑。おまえさん、こういうの苦手なの?」

紫苑の異変にイヌカシが気づき、にまにましている。

「い、イヌカシ!違うよ、」

「まぁ、ものは試し。紫苑、あきらめなさい?」

沙布もやはりにまにま。

こいつら・・・紫苑が心霊現象苦手なの知ってるな・・・?

「悪いけど、俺と紫苑は今から遊ぶ約束してるんだよな。
だから今回はお開きにしようぜ。生徒会長さん?」

俺が助け舟を出したのに気づき、紫苑がぱぁ、と明るくなる。
可愛いな、紫苑。

しかし生徒会長も譲らない。

「ドブネズミはだまってて!!・・・ねぇ、紫苑?
私と約束したじゃない、今日は途中で抜け出したりしないで、私といるって。」

それを聞いて紫苑はう、となる。
それをいい事に沙布は続ける。

「ね、紫苑?私、音楽室のベートーベン・・・気になるのよ。」

そこで紫苑が、折れた。

「さ・・・沙布がそこまで言うなら・・・。」

「やった!ありがとう、紫苑!!」

イヌカシも紫苑の怖がる姿が目に浮かぶのだろう、にまにましていて
今にも顔のパーツが変化しそうだ。

俺はそっとため息をついた。


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