小説 | ナノ

  閉じ込めたい、心ごと


  


 いつも柔らかく包み込んでくれるベットに押し倒されている俺――と馬乗りになって俺を押し倒しているベルナルド…。……。
「―…で、なんでこんなことになっちゃってるのかしらん?ダーリン」
「さあ?ジャンが一番良くわかってると思うけどね」
 不思議そうに首を傾げながらも、にっこりと作り笑いを浮かべるベルナルド。ワアオ…あきらか怒っていらっしゃる…。まあ、原因は予想ついてるんだけどネ…。
「なんだよう……ルキーノのコト怒ってんのけ?」
 きっと、さっきベルナルドの執務室で頭を休めてた時に、たまたまルキーノが来て「お前はいつ見ても良い金髪だな…ちょっと弄らせてみろよ」とか言って触ってきたのを好きな様にさせてたのが気にいらなかったんだろな…睨んでたし。だって連日続く激務のせいでヘトヘトに疲れちまって抵抗する気力もなかったんですもん。
「流石……ジャンは良く判ってるね。…でも、分かっていて俺の目の前で見せつけるなんてとんだ子悪魔だ。そんな悪い子には――お仕置きしなくてはね」
「っ、は…!?な、っ、ベルナルド……!」
 にやり、と悪い笑みを浮かべたベルナルドは、俺の服に手を伸ばしネクタイからするすると脱がし始めた。それにぎょっとしながら抵抗してみるがベルナルドのスイッチが入ってしまった今となってはもう遅かった。あっという間にシャツもはだけさせられてベルトも緩められちまっていた。
「お、い……ベルナルド……!な、んだよ……もしかしてアンタ、嫉妬…してんの?」
「――悪いかい?だって、ジャンは俺のものだからね」
 にやりと冗談めいてそう言うと、ベルナルドの怒ったような独占欲のぎらついたその表情とぶつかる。
「――ッ……!なんだよソレ……ばかやろ……ン、っ…う…」
 くっそ…そんなこと言われたら抵抗できねーじゃんかよう…。そんな風にベルナルドに縛り付けられることがたまらなく嬉しくなるなんて俺はもうかなりコイツにやられちまってるらしい。
「ふ、…んぁ……、…く…」
「……ぅ、…っジャン……」
 ベルナルドの優しいキスが、奪い取るようなキスになって俺を蕩けさせる。あー、こうやってベルナルドとキスすんの久しぶりだ。最近仕事に追われっぱなしで二人きりの時間なんか作れなかったしな…なんか帰ってきたってカンジ?ぼんやりとそんなことを考えていたら、気がつかぬ間にベルナルドが俺の胸に顔を伏せていた。そのまま胸の突起強く噛まれてピリッとした刺激が腰にくる。
「ひ、…っぁう……、ぃ、っ…てえよ…もっと……」
「っン…?痛くないとお仕置きにならないだろう…?…それに、痛いだけじゃないと思うけどなぁ」
 俺の声に伏せていた顔を上げたベルナルドが意地悪くそんなことを言う。ぐ、と言葉が詰まった俺を見てふ、と微笑を浮かべたベルナルドはまた顔を伏せ行為を再開する。クソ、…このサディスト…!
「……ンぁ、あ…、んな、わけ……、っぁ!…ソコ、やめ…っ、てば……」
 容赦なく乳首を愛撫されるせいで、身体がもうすっかり熱を持ち始めていた。ちょっとした痛みとよく分からない快感が交互に来て俺を攻め立てる。他はどこも触られていないというのに、俺のモノはもうすでに反応しちまっていた。
「――あぁ、ジャン…。もうココもこんなにして…、そんなに気持ちい?」
 そんな俺の反応をめざとく見つけたベルナルドは、確かめるように布越しに俺のモノに触れた。ベルナルドの手の感触と体温が俺に更に刺激を与える要素となって、びくん、と腰が揺れちまう。
「うっせ……ぇ、はげ、ろ…この…えろ、おやじ…っ」
 責めるようなベルナルドの言葉につい反抗的な言葉が口をついて出る。でも、俺の身体は正直でじわり、と先端から先走りが溢れてもう服をダメにし始めていた。それをベルナルドは分かっているのに、ゆっくりと形をそっとなぞるだけで楽しそうな笑みを浮かべている。
「おや……反抗的だ。そんな減らず口を叩く子には、もっと強いお仕置きが必要かな?」
 そう言うと、ベルナルドの笑みが一層深くなる。けど…目が、笑ってねえ…。う、ヤベぇ…これ…もしかして地雷踏んだ、か…?
 今更ながらに、後悔し始めているとベルナルドはまた、さっきと同じように俺の胸に顔を伏せると俺の乳首に前歯をつきたてた。
「っ!んぁ、やだ!」
 瞬間、さっきより強い刺激が俺の腰に伝わってくる。俺が嫌がってベルナルドの肩を押しても、奴はぴくり、とも動かずに俺の乳首を口に含んでいてそのまま噛み千切られるんじゃないかと頭の片隅でそんなことを思った。噛まれている力は強くて痛いのに、ちょっと吸われたり舐めたりされるだけで不思議な感覚が俺を襲う。なんだコレ――痛いのに……気持ちイイ…。
「ぁ、う……っふ…、…ぁ、ンっ!」
 ぞくぞくと全身にどうしようもない刺激が伝わって、快感の波がどんどんと俺に押し寄せてくる。いつもとは違う刺激なのに、確実にイッちまう前の様なよさが下っ腹にたまっちまっていた。
「…っな、な…んか、ヘン、だ…っ…、…も、そこ、ばっか…ぁ」
「フフ、――変って?」
 ベルナルドはにやにやと口角を上げて笑いながら、意地悪くそんなことを言う。コイツ…分かってる癖しやがって…性格悪ぃ。睨みつけてみるが、ベルナルドの指先が巧みに動いて執拗にそこを攻め立ててくる。
「や、あっ、あ!…ちょーし、のんなよ…っこの…!ぁ、だから、そこ、やだ…ってば…」
「ん?――気持ち良いんだろう?」
 う、そーだけど!そーいうことじゃねえ。
 乳首ばっかりしつこく触られてるおかげで、俺のナニはもう元気すぎるぐらい元気になっているというのに、ベルナルドはそれに気づいている癖に一向に下半身には触ろうとしねえ。悪どい笑みを浮かべたまま、吸ったり舐めたり執拗に乳首だけを愛撫しているコイツに俺はかなり焦らされていた。決定的じゃない、炙られるような快感が与えられるばかりで、もう身体が蕩けそうになってる。
「はっ、はあ……ふ、…ぁ」
 身体が熱い。ベルナルドに調教されまくった身体は、もう簡単にコイツの手管に陥落してしまうように出来ていて。俺は耐え切れず、服の裾を握り締めていた指を解いて、せわしなく動いているベルナルドの指先を掴んだ。
「……な、あ……べるなるどぉ…こっちも…さわって、よ――」
 指先をゆっくりと俺の下肢まで誘導する。ありありと分かるほど膨らんだスラックスの布地に触れるか触れないかというところで、指先がぴたり、と動かなくなった。
 あ、なんで―――
「っフ……ジャンはこっちだけで、イけるだろう?」
 あからさまに不服な顔を向けると、どこか嬉しそうなベルナルドはちゅ、と頬にキスをしてから、また弄り倒すように乳首を舐め上げた。
「ひ、や、うう!やぁ、むり…っぃ…!や、っぁ!」
「ジャンならできるよ、ほら―――」
 そう言って、ベルナルドがきゅ、と強く乳首を摘む。途端、強い刺激がずしん、と来て俺はどんどん快楽に飲み込まれちまう。
「あう!…く、ふ、…っ!あっ、あ、ぁ…!」
 必死に首を横に振って、これ以上は無理だとアピールしてみるが、ベルナルドはそんなことには目もくれず楽しそうに俺の身体を弄る。もう快楽に陥落した身体は、弱弱しい抵抗しか示すことができずコイツの良いようにされるしかない。
「う、ぁ…ん!ひ…っあう!っぁ…やだ、む…りっ…!べるっ、おねが…!」
 俺は、堪らずもう一度ベルナルドに懇願する。
 がくがくと激しく揺さぶるような快感が断続的に襲ってくるせいで、我慢もかなりの限界がきていた。さっきからベルナルドに嬲られているところがじくじくと熱くて、このままだとベルナルドの言う事が現実になっちまいそうで――
「だーめ……こっち――」
 俺の必死の願いも虚しく、俺にとって残酷すぎる言葉をかけられて青ざめる。呆然としていると、すぐ様俺の胸に伸びたベルナルドの指先が、乳首に触れた。散々弄られたソコは、もう赤く色づいていて、微かな刺激でも俺を激しく追い詰める。
「ひぃ!あ、あう!…は、も、だめ!っ…なん、か、…ぁっ!」
 訳が解らなくなるような、変な快感が身体中を満たして、おかしくなりそうだった。
 オレ、ホントにこのままーーー
「イッていいよ、ジャンーー」
 耳元でそう囁かれて、じゅ、と強く乳首を吸われた瞬間なにかが俺の中で爆ぜた。
「ふあ!…ぁ、あーー…、ッ!」
 導かれるまま、身体の中に溜まっていた熱から解放される。
 ーー…う、ぁ…。…イッちまった……。
「っは…は、ぁ、…う……っ」
 快感の余韻ではあはあと忙しなく息をつきながら、暫く何も言えずに呆然としていると、この上なく極上の笑顔を浮かべたベルナルドが俺の唇に口づけた。
「ん、…む、っ…ぁ、……」
「……っ、ン…、ふ…ハハ…、ココだけでイッちゃったね」
 そう言ってベルナルドは笑いながら、そっと俺の乳首に触れる。その少しの刺激にも敏感になっていてピク、と腰が跳ねた。
「うっせー………禿げてしまえこのエロ魔人……」
 確かめるようなベルナルドの言葉に少しだけカチンときて、ベルナルドの手から離れ、ふん、と仰向けになって枕に顔を押し付ける。何がお仕置きだ!絶対アンタがこういうプレイしたかっただけだろもうやだこの万年エロオヤジ!もう知らん、こんなダメオヤジなんか一人で寂しくマスかいてればいいんだ。ふん。
 さっきされたことがぼんやりと頭に浮かんでくる。ああ、クソ。俺やだって言ったのに強行しやがって……乳首だけでイッちまうとか…俺どんだけこのおじちゃんに調教されてるのん。つーか、ベルナルドが相変わらずテクニシャンすぎて、もう俺の身体がもたねえわよ…どれだけ俺に新しい扉開かせるんだか…。
「あ……ジャン――ごめん。拗ねるなよ…」
 俺が拗ねたことに目敏く気づいたベルナルドが、ハッ、として慌てながら俺の髪を優しく梳いた。どこか困ったような、許しを請うような優しい声が俺の耳を揺らす。黙ったまま、何も言わないでいるとまたベルナルドの声が振ってきた。
「――ジャンは、可愛すぎるんだ…」
「ッ!?」
 はあ?!
 思わず仰向きからベルナルドの方へばっと振り返りそうになる。
「だから、どうしても心配になる。お前に触れる全てに嫉妬するんだ。俺でさえジャンに触れる機会が少ないのにアイツは――。……そう思うと気が狂いそうでね」
 俺の髪に口付けながら囁かれる殺し文句に、顔が熱くなるのを感じながら耐え切れずに、少しだけ顔を動かしてちらり、とベルナルドを見やった。うう、ナニ?これってなにかの羞恥プレイか…?すぐに優しい色合いを灯したアップルグリーンの瞳と目が合う。
 どきり、心臓が跳ねた音が聞こえた気がした。
「お前を誰にも触れさせたくない――ずっと、ここに閉じ込めてしまえたらいいのにな…」
 そう呟いて苦笑を浮かべるこの男に、たまらなく愛しさが募る。なんだよそれ……アンタってホント……。さっきまでのひん曲がった意地はとうの彼方に、消え去ってしまっていた。
「できないくせに―――」
 にやり、とした笑顔を浮かべてベルナルドを向き直った。ベルナルドは蕩けそうな笑みを灯して小さく頷く。
「その通りだよ。俺には、……できない。悲しいことにね…」
「――それでいいんじゃねえの?そんなことしなくても、俺はちゃんとアンタの傍にいるんだからさ」
「ッ!……ジャ、ン―――」
 ベルナルドは目を見開いて驚いた後、くしゃりと顔を歪ませた。
「ばーか。なに、泣きそうになってんだよ」
 震える肩に腕を回し、そっと抱きしめる。こんなことで不安になりやがって、もう手の掛かる恋人だなあ。俺がアンタを好きな事、ちゃんとわかってんダロ?こんなお仕置きとかプレイとか好き放題させちまうぐらいにさ。
 じんわりと暖かい体温が俺に伝わって、それが俺の心にも伝わったのか俺とベルナルドが一体になるかのような幸福感で包まれていた。
 俺達は、暫くそうして―――ひたすらにお互いの体温を感じあっていた。


END


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