小説 | ナノ

  よくばりダーリン!


「や、やだって……!ベルナルド…ッ!」
 ベッドの上で必死に後ずさりしてみるが、腕が後ろ手に縛られているせいでそれも上手くいかない。逃がさまいとベルナルドががっしり俺の上に乗っかっているから逃げるのもできねえ。ダーリンはそんな俺を見下げてにやにやと楽しそうな笑みを浮かべた。
「ん?今日だけは俺の言うコトなんでも聴くんじゃなかったのかい?」
「うう…確かにそう言ったけどよぉ…」
 けど、まさかこんな縛りプレイさせられるとは思わねえじゃんか。ダーリンがここ迄変態さんだったとは…こういうプレイ好きとか知りたくなかったわん。変態なのは…知ってたケド。だって何時ぞやのテレフォンで致しちまった時のアレの声を、ノリノリで録音したり、執務室とかエレベーターえっちを平気で実行するようなエロオヤジですし?俺ももう大抵は慣れっこっつーか…でも…だからってこのプレイは…ねーわ…。
 せっかくの誕生日だからったってウッカリ「プレゼントに今日だけ、アンタのしたいコトなんでも叶えてやるぜー」なんて軽口叩いたのが運の尽きですヨ。俺的にはどこ行きたい〜とかなんか美味えもんでも〜とかそういうの期待してたんだが、ベルナルドときたら、「なら、ジャンを縛らせてくれないか」とか真顔でのたまいやがるんだからもう救いようがないわん。こいつがかなりのエロ魔人だってことすっかり失念してました。
 でも、そんなベルナルドのオネガイを二つ返事で受け入れちまった俺も俺なワケで。だってかなり酒入ってたし…あの思わず見惚れちまうほどの素顔で、 見つめられたら、 俺はついほだされちまうんだよ!
 はあ、と溜息が口を着いて出た。
「なんだ、ご不満かい?ジャン」
「ったりめーだろ!縛りプレイとかマニアックすぎだっつの!」
 縛られた俺を見て機嫌良く笑うベルナルドを睨みつけて、酔いが覚めて戻った理性により、存分に文句を叩きつけてやる。
「ただ、ジャンにさせたいことをあれこれ考えていたら…自然と、……な。」
な?じゃねえ!
 つーか俺にさせたいコトがコレ以外にもあれやこれやあるのかよ…うう、これ以上に恐ろしいプレイが含まれてそうで、想像すんのも怖えー。ああ、この変態誰かなんとかしてくれ!
「自然と縛りプレイに辿り着いたと申すかこの真性エロ魔人」
「左様でございます、マイタラント」
 あっさり認めんな。もうドン引きですよ。こんなプレイが発覚したら例えアダムとイヴでも恋が冷めかねないよネ。
「さ、始めようか。ジャン」
「クソァ…いっぺんしんどけこのぉ…」
 半目になって呆れ顔の俺がそう毒を吐いて見るが、しれっとしたベルナルドにはそんなものは痛くも痒くもないようだ。なにがなんでもこのプレイ実行する気だなコイツ…。手も足も出せない状態の俺は、せめてもと精一杯抗議の視線を向ける。しかしベルナルドはそれにくす、と楽しそうな笑いしただけで、顔を近付けて俺の唇に舌を這わせた。
「…ん、ん……ぁ、っ」
 突然の事に驚いている俺の薄い唇に、その口内に、そのまま、ベルナルドの舌が侵入してくる。舌をゆっくりなぞられたり、舐めまわされたりして、段々頭がぼー、っとしてきた。いつもの事ながら、ベルナルドはキスが上手い。さすが自称テクニシャンなだけあって、俺はもうキスだけで一コロだ。いわずもがな、とろとろに溶かされちまう。
「んむ……、あ、う…」
 ぼーっと甘受していると、同時にさりげなく俺のシャツに侵入してきたベルナルドの手が、俺の肌をつついて、撫で回す。身じろぎしてみるが、乗っかられているせいでそれも叶わなかった。
「ん…、…ふ、ああ……もう汗ばんでるな」
 唇を離すとふ、とベルナルドの口角が上がり、撫でくりまわしながら、嬉しそうに笑った。つ、と唾液が唇を濡らすのがなんかエロい。
 くっそ…この…、調子乗りやがって…。
「ふ、はあ……、さわ、んな……!」
「触ってほしいくせに」
 ベルナルドはそう言うと、そのまま手を滑らせて俺の乳首をさぐり当てた。突然のその感覚につい腰が跳ねて、後ろに縛られた腕がギシリと痛んだ。
「んぁ!ばっか……んなわけ……、っ…や……つま、…む、なあ……ぁ!」
 ぐりぐりそこを刺激してきて、つい声が裏返っちまう。気がつくと、もうシャツが胸の上までまくり上げられていた。手が早すぎんだろ…!
「じゃあ舐めてあげるよ…」
 途端、ベルナルドが俺の胸の上に顔を伏せたかとおもうと、熱い舌の感触が乳首を撫で上げ刺激した。
「ひ!……ぁ、それ……だ、めっ、ん…」
 ゆらゆらと揺れる度、肌を撫でるベルナルドの髪のくすぐったささえも、俺の快感を誘う。下半身がズン、と重くなった気がして、足が揺れちまった。う、モロにクるな…コレ…。
「――ん?……ああ、もう勃ってるな…」
 薄く弧を描く唇と、アップルグリーンの瞳が欲情の色を示しているのをみてぞくぞくする。それに鋭く感づいたベルナルドが顔上げてちら、と俺の下半身を見ると、にや、と男らしい口元が笑った。クソ、アンタも勃ってるくせに。
「うっせえ……、アンタの、せい…っだろ…」
「そうだな――」
 ふふ、と笑ったベルナルドはちゅ、と乳首にキスをしてから、身体全体を愛おしむように首、腕、腹…段々と下にキスを落としてくる。
「ン……」
「っ、うわ!?」
 ベルナルドは腹から下肢へ到達すると、ズボンのベルトを手際よく外した。そのままチャックも下げると、ずる、と俺から全てを取り去った。ぼと、と床に無残にもそれなりに良い仕立てのズボンをゴミかなにか見てえに放り投げる。ぐい、とベルナルドの腕が俺の脚を掴んできて腹に付くくらい大きく開かせされて、奴の前で秘部をさらけ出された。
「うあ……!っや……ばか、…んな、見んな……よ」
 ベルナルドが、その瞳がこんな俺の痴態をじっ、と見つめてる。焼けるような視線が、その熱が、俺を犯して――まだ触られてもないモノの先からじわ、と溢れた気がした。恥ずかしくて、足を閉じたいのに奴はそれをさせない。掴まれてる手はびくとも動かなかった。くそ、もし腕が縛られてなかったらその前髪毟ってやるのに…!
「何を仰る。俺に縛られて、肌を晒してるこんなに卑猥なジャンの姿――見ないと勿体無いだろう?…ああ…俺がジャンをレイプしてる――物凄く興奮するよ」
「ぁ、うっ、なに言って……っ、ん……だ…!この…えろ、おやじ、レイプ…魔、……へんたい…っ……――ひッ!?」
 白々しくも、俺の乳首を弄って喜ぶベルナルドに、思いつく限りの罵倒を浴びせていると、なにかが、俺の孔に触れた。そのまま2、3回撫でてからずく、と俺の中に入ってきた。
「うあ……あ…っ!?な、この……っゆび…っぃ…」
「――慣らさないと…、だろ?」
 そうだけどイキナリ入れんじゃねえ!
 ベルナルドの細長い指が俺の中を蠢く。一本だから痛くはないケド、やっぱり異物が入っているみたいな違和感があって苦しい。
「っ…あ…」
 つい眉を潜めると、一本で俺の中を解す作業に徹していた指が、動きを止め、ぐ、ともう一本ゆっくりとナカに押し入ってきた。
「あアっ!…う、ぁ……やだ、…そこ…」
 その弾みに指が前立腺を掠めて、びり、と電気が走ったような快感に腰が跳ねる。
「ん、ココ…かな?」
 意地悪い笑みを浮かべたベルナルドが、俺の良いとこと指で刺激してくる。クッソ…こいつ!
「ああっ、あ、あ!……ン!…や、……だめ、っ、……べるなるど!」
「…ジャン」
 ベルナルドの美声が俺の耳に伝わって、首筋からゾク、と腰に刺激が流れ込む。俺は無意識に指を締め付けて、いつの間にか腰が揺れちまっていた。
「――ほら、見て。もうこんなにトロトロだ」
「うっ、く……!も、見せ、んなあ……!ば、っか…やろ……っあ、ああっ!」
 つ、と指で入り口付近をなぞると、にや、と獣じみた笑みを浮かべて、それを見せ付けるようにした。なぞられる感覚に腰が浮いて、抑えきれない声が出る。ベルナルドはその俺の反応を楽しんでいた。
「ふ、……っく!…う、ぁ、…っん…、ぃ、べ……ベル、ナルド…ぉ…」
 ナカの指が繊細に――大胆に、俺の良いところを擦る度に、腹の奥からたまらない快感が攻め立ててくる。俺は確実に追い詰められていた。
「ン――…、もういいか……?」
「や、待てっ、て…!コレ、この縄…!いい加減……、はず、せっ……!」
 ずる、と俺の孔から抜かれたベルナルドの指につい腰が引ける。はあ、と息を吐いたベルナルドが、ズボンを下げるのを見ちまった俺は、ゾク、となにかが背中を駆けて行った感覚がして――慌ててソレに、…さっきから痛みを訴えていた腕の方に意識を向けた。
「…そうだな、こうして縛られてるジャンがあまりにも魅力的すぎて、外すのは少し惜しいが――、折角のお前の白い肌に痕を付けるのは、些か勿体無い気もするしね――」
「ぬかせ。このエロオヤジ……」
 何が勿体ないんだ、何が!
 本気で考えた後、ベルナルドはそんなアホなコトを言って笑った。
「痕を付けるのは今度またゆっくり――な」
 ワオ!この人本気でエロ魔人です。俺を抱きしめるようにしながら、後ろ手に縛られていた縄を呆気なく解いた。途端に、腕が開放されて、ほっとする。一気に血の巡りが良くなってびりびり痺れている腕を、ゆっくりベルナルドの首に回して、キスを強請った。
「っん…う、ぁ、…ふ……っ」
「……は、ジャン…っ、…」
 唇に優しいキスが振ってくる。ふわり、と香るベルナルドの、香水の匂い。コーヒーと、タバコの嗅ぎ慣れた味――舌が痺れるみたいに蕩けた。
「ん…、あ……う…、……べるなるど…、ふ、ぁ…!」
 気持ちよくてぼ、っとしていたら、下の孔をなぞられて腰が跳ねる。…アレ…、な、なんか嫌な感触が――
「な、…っ、ふ、……んく…っ?……っん!?―――ッく、ぁ!」
「っ、く……、キツ、いな…」
 キスに夢中だったせいで、一瞬、その感触がなんなのか分からなかった。それがベルナルドのモノだと理解した瞬間、ずん、とソレが一気に奥まで押し込まれて、息が詰まる。あまりに突然入れられて、身体が弓なりに反れた。
「ふぁ、あ……ぁ!はっ、…っは、この……ばか……!いきな、り…入れんじゃ、ね…!」
 文句を言いつつ、ばしり、と力ない拳で肩を叩いてやると、眉を潜めたベルナルドが瞳を優しく細めて俺の散らばっていた髪を梳いてそこにキスを落とす。
「ごめん、ジャンがあまりにも可愛くて、な――…もう、動いてもいい、か?」
「…ふ、あ……、は、は……っン、…も、…は……やく…」
 言うが早いがベルナルドの熱棒がぬちゃり、と卑猥な音を立てて動きだした。
「っあ、あン……!うあ!……っく、あ、あ、っう!」
 中でベルナルドの熱い塊が容赦なく俺の良い所を突き上げてきて、蠢いた。俺を見下ろしているベルナルドの瞳が明らかに欲情しているのが見えて、クラクラくる。
「――ッ、は、ジャン…」
「ひっ!ッ、…や、……あ、あッ!は、ン…っ!」
 ごりごり、と前立腺や奥の良いとこを突かれる度に、頭がバカになっちまうほどの快感にせめてもと腰をゆらしてみるが、ベルナルドが腰を掴んでいるせいでそれも上手くいかなかった。じりじりと腹に熱が溜まってくのが分かる。もうかなりヤバイ。
「あッ、あ、あう!い、…っ、はっ……!も、べる……う!」
 腹が煮込まれてるように熱い。中を押し上げながら首筋にキスを落としているベルナルドにすがるように抱きつく。容赦ない攻撃と逃げ場のない快感に背中にギリ、と爪を立てちまう。ベルナルドはそれにセクシーな呻き声を漏らした。
「……ッ、く…!…ジャ、ン…ッ…」
「ひあ!あ!……ッ、ぁ、……やぁ!…やだ……や…っ、!も、…っだめ!ぁ!」
 首筋にきた刺激に腰を揺らすと、ベルナルドは一層強く中を押し上げてくる。気持ちよすぎて、口から漏れたよだれも、自然と頬を伝っていた涙も、何時もは出ない類の耳を塞ぎたい嬌声も、何もかもどうしようもなかった。
「ああ…もうこんなに…びくびくしてる―――…ん……もうイキたい…?」
 ベルナルドはだらだらとだらしない液を漏らしている俺のモノを愛しげに見つめて、焦らすように触れる。
 もうとっくに限界が近い。そんな事分かっている筈なのに、ベルナルドはこう意地悪く聞いてくる。エロい言葉を言わせようとするベルナルドはホントヘンタイなオジさんだもう。アンタの名前は明日からヘンタイジジイにしちゃる。頭の片隅でそんな事を思った俺だが、現実では相変わらず止まる事の無い愛撫に文句をいう余裕も無く、その問いに必死に頷いた。
「――俺も、もう限界、だ…」
 俺の願いが通じたのか、低くそう囁いたベルナルドは欲望のままにソレを動かし始めた。その動作に合わせて俺の腰も揺れる。
「ぁ……っ、く、う…っ!……や、っや!っべる!」
 ラストスパートに掛けてさっきのいたぶるような動きとは違い、天まで追い上げるような激しい動きに本当に昇天しちまうんじゃねーかと思う。ぐらぐらと頭が揺れて、視界もブレる中、もうろくに頭なんて働いていなかった。
「あ!ァあ!…ひぃ、ッ、う……!も、イく……イっちゃ…!べるな、るどぉ!」
 熱い。ありえない熱さが部屋と、俺とベルナルドの間を行き来していた。――あつ、とける…!とかされちまう…!
「っ、う…俺も、だ――、――ッ、ジャン…好きだ……!」
「ッ…!イッ……も!ぁッ、あッ―――!!」
 呻くようなベルナルドの声に囁かれて、ベルナルドのが奥の奥まで俺を犯して――
止められない快感から逃れられないまま、たまりに溜まっていた俺のモノから絶頂とともに白濁が俺の腹を汚した。
「―――ッ、!」
 と同時に中でとっくに硬くなっていたベルナルドのモノも膨らんで、ぶわ、と俺の中に欲望を吐き出したのが分かる。塗らされる感覚にたまらない満足感で満たされる。
「は…、ふ、ぁ、…あ……。…っ、ふ、……ん…っむ……」
 射精の後も、びくびくと痙攣している重い身体を持ち上げて、荒い呼吸を整えながらベルナルドにしがみ付いていると、ちゅ、と唇に甘いキスが振ってきた。
「ッ、は、あ……、ジャン…っ、ふ…お前は最高だ…」
「んう…っ、こ、のぉ…、へんたい……、ばかやろ……」
 ベルナルドは、キスをした後俺の横に幸せそうに寄り添った。まだ余韻でとろけちまいながら、俺はせめても、と悪態をついてやる。
「んー?…ここは憎まれ口じゃなくて、他の言葉が聞きたいんだけどな?俺は、まだ今日聞いてないよ、ジャン」
 遠まわしに、それでいて俺にわかるような言葉を投げつけてから、ベルナルドは凄く期待の眼差しでにや、と笑った。この……しょうがないおじちゃんめ。
「縛りプレイとか…この俺を散々好きなようにしておきながら、欲張りなダーリンね。貪欲は身を滅ぼすわよ?」
「いいじゃないか――今日は俺が主役の日だしね。こういうプレイがジャンにできるのも、今日の特権さ」
 なにしれっとぬかすかこのオヤジ。
 ちょん、と鼻先を指でつついてやると、その指を手に取られキスされる。ちら、と覗く舌と綺麗なアップルグリーンの瞳が新たに欲望の炎が燃え上がろうとしているのを見ちまえば、もう手をひらひらと揺らし白旗を上げるしかなかった。――ハイハイ、もう、降参だっつの。
「ばぁか…、誕生日オメデト。ダーリン」


END

prev / next

[ back to top


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -