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  賭け事の報酬1


 機械音やら人々の歓声やらがあちこちから聞こえてくるざわざわしてるが、どこもかしこも煌びやかに彩られたフロア内。俺―――CR−5ボス、ジャンカルロは、ルキーノの仕切りであるその店のカジノに連れて来られていた。
「――さあ、ショウダウンだ」
 その言葉とともに手札のカードを見せ付けるようにテーブルに落とすと、それを見ていた周りの客らが一気にざわめいた。と、同時に今まで毅然とした態度で俺とポーカーをしていたディーラーが、この世の終わりのような青ざめた表情を浮かべる。ワーオ、やりすぎちゃったカンジ?呆然と見せたままのカードを見つめるディーラーに、ほんの少しだけ罪悪感を感じつつ、テーブルに集められたチップを一気にこっちへかっ攫った。
「いっただっき〜」
 残念だったネー、あそこでもう少し踏み込んでれば俺に勝てたかもー、なんつって。これで俺、今日何連勝目カシラ?勝ちまくりすぎてもう覚えてねえ。と、にやにやしていると、背後から大きな手が伸びてきてわしゃわしゃと俺の金髪を撫で廻した。
「うあっ!?」
 何だ!?ぼさぼさに乱れた髪の隙間から背後をのぞき見ると、赤毛のライオンヘアーをした色男、ルキーノが可笑しそうに口角をあげて笑っていた。なんだよ、ルキーノか......、アレ、コイツさっきまで向こうのスロットの方にいたよな?...もしかして、さっきのポーカー見てたのか?

「――ったく、相変わらず恐ろしくなるほどの強運だな、ラッキードック。あーあ、支配人涙目じゃねえか」
「なんだよー、ここで思う存分遊んでくれ、って言ったのルキーノじゃんかよう」
「だからってお前なぁ...ここは一応俺の仕切りなんだぞ?潰れて面倒なことになる前に、少しは手加減してくれよ?」
 困ったように苦笑いを浮かべるルキーノを改めて振り返って、その巨体を見上げる。相変わらずのいい男だコト。
「ンー...、だあってよー、俺に敵うヤツが居ねーんだもんよ。なんていうかもうどうしても俺の一人勝ち状態になっちまうから、負けるとかできないってー」
「...こいつめ」
 にやり、とした勝者の余裕の笑みを周りの観客とルキーノに向けると、より黒さを増した笑みをにっこりと返される。何その笑み、怖え...今ルキーノの目に鋭い光が見えた気がしたけど気のせいか?
 そして、その笑顔のままルキーノは俺のすぐ横に来たかと思うと、隣の呆然としているディーラーのテーブルに着いた。
「アレ、アンタもコレやんのけ?」
 それに目を丸くさせてチップを手に取るルキーノを見る。するとすぐにディーラーも渋々復活したように動き始めたのを横目で確認したルキーノが、俺に視線を移して、さっきまで居た場所――ルキーノと同じテーブルの一角を指差した。
「ああ。ちょっと興味が沸いてな。――なあ、ジャン...今度は俺の相手をしろよ」
「はあ?」
 ナニ言ってんですかネ、この幹部様は?
 怪訝な顔を向けると、シニョーラが見たら一瞬で卒倒するような不適な笑みを浮かべたルキーノが指で挟んだチップをひらりと見せる。
「だから、俺と賭けをしろと言ってる」
「――賭け?」
 エート、つまりこのポーカーで俺と勝負しろってこと、だよな?ルキーノはこういう場で俺と勝負するんなんてことはあんまりない。だって俺が、賭けにめっぽう強いことを知っているからだ。賭け事をしても大抵勝つのは俺だから、幸運の女神様としてルキーノの味方に付いてるほうが多い。
「俺と賭けをして、俺が勝ったら――なんでもひとつ言うことを聞いてもらうぞ」
「......アンタが負けたら?」
 にやりとした笑みのルキーノに、ごくりとつばを飲み込んで、汗を額に感じながらルキーノの次の言葉を待つ。
「―――そうだな...、お前が好きな事をひとつ、やってやる」
 その言葉に心臓がドキリ、と跳ね上がる。
 その『賭け』のご褒美につい、乾いている喉がなった。俺には十分すぎるぐらいのご褒美だったからだ。これに勝てば、ルキーノになんでも好きな事ひとつやらせられる...?うわ...超魅力的すぎて、今の俺にはどうやっても抗えませんわー。さっすが俺のダーリン...俺のことを熟知していらっしゃる。うー、ルキーノと争うのは嫌だけど、ご褒美は欲しいわん。暫くしてひとつの答えを導き出す。
「―――やる」
 俺には選択肢はないも同然だった。
 イイお返事を聞いたルキーノは満足そうに笑うとさっそく、とさっさとポーカーを始めた。
「――ま、でもやるからには勝つぜ」
 ラッキードックであるこの俺の力をとくと見せてしんぜよう。

「――は、そう言ってられるのも、今のうちだ」



                   To be continued...




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