「長谷川〜英和辞書貸してくれ!!」
「はいはい。どうせまた英語の課題終わって無いんでしょ?」
「さすが長谷川、ご名答!!じゃあ教えt「自力でやれ。」…はい」
赤也と私は小学校からずっと仲が良くて、しかもずっと同じクラス。所謂腐れ縁というやつ。
まぁ、知っての通り赤也は英語が全く出来ない。あるいみ凄いくらい(笑)
逆に私は英語が一番得意。
だから赤也はいっつも聞きに来るけど、偶には自力でやってもらう。
だって疲れるじゃない?
………ていうのは表向きの事で。
ホントは昔から赤也に片思いしてる。
毎年毎年クラスが変わる前にこの気持ちを伝えようとしても、結局出来ないで、また同じクラスだからおんなじ事の繰り返し。
しかも中学生になってからというもの、赤也はあの超強くて有名(しかも美形揃い)なテニス部に入部。
他の人より近くに居るとしても、益々手が届かなくなった気がする。
「……いつの間にか遠い存在になっちゃったな…」
その日の英語の授業なんて全然耳に入らなかった。
しかも、昼休み屋上で多分生まれて初めて学校で居眠りをした。
…今日の私大丈夫か?
居眠りした時、夢をみた。
『長谷川!!』
『俺、待ってるから!!俺、短気だけど…何年でも待ってるから!!』
凄く泣きそうな顔をした小学生の時の赤也が私に言っていた。
あれは、確かちょっと私が親の実家に帰るだけの事を、友達がふざけて赤也に引っ越すって言って、信じた赤也が私に言った言葉だ。
……確か4年生位かな?
そのワンシーンしかみないで夢は覚めた。
なんか変に心臓がざわめいてる。
まるで“早く、早く”と言っているように。
何も考えず、階段を駆け下りて、着いた場所は…
自分のクラス。
言い換えれば、赤也のクラス。
「あっ、長谷川居た!!お前どこ行ってたんだよ。」
「ちょっとね」
必死に息を整えて答えると、ふーん、なんて聞き流してこっちに歩いてくる赤也。
「これ、ありがとな」
「あ、うん」
辞書を返してクラスを出て行く赤也。
……ちょっと顔赤かった?
気のせいか。
席に着いたとき辞書が落ち、中から何か書かれたメモ帳が出てきた。
何これ、“これ超重要暗紀事項!”?
てか、暗記の“記”が“紀”って…
日本書紀じゃないんだから。
気がつけば、辞書に付箋が貼ってあった。
そのページを開くと、“like”に斜線が引いてあって“love”にラインが引いてあった。
「………バカじゃないの」
滅茶苦茶照れくさくなって、部屋を出た赤也を夢中で追いかけた。
辞書にライン
“これ超重要暗記事項!”
(もう、待たないで良いよ。今すぐ伝えるから…)