確実に仕留める炭治郎

※大学生。現パロ


こんなに指先に集中したことはない。
名前の心臓は煩く、その鼓動が周りに聞こえているのではないかと心配になる。

心臓の高鳴りの原因は想いを寄せるサークルの先輩、炭治郎が隣に座っていることだが、自分をここまで追い詰めるこの状況はそれだけが原因ではない。

平然を装いジョッキを片手に仰ぐが、空いている手はテーブルの下で炭治郎の指先と触れ合っていた。
触れ合うと言ってもただ小指と小指がたまたま接しているだけだ。それなのに全神経がその指先に集中している。

向かい側に座る別の先輩が話し掛けてくるので相槌を打つが正直何も頭に入ってこない。


「名前、メニュー取ってくれるか」

「ひっ」

突然、炭治郎に話しかけられて変な反応をしてしまいながらも急いで横にあったメニューを取る。

「ど、どうぞ」

「名前ちゃんは炭治郎のこと苦手でしょ」

「え」

向かいで先程から喋っていた我妻先輩がそんなこと言うので何と返すべきかわからず固まってしまった。


「そうなのか?」

近い、近い、近い!
炭治郎が覗きこむように見てくるので更に硬直する。
しかし何か言わねば。


「ふ、普通、です!」

空気が固まる瞬間を初体験してしまった。


「ぶはははは」

「善逸笑うなよ」

困ったような炭治郎の表情にとてつもなく恥ずかしく、申し訳なくなる。

「すみません、なんと言ったらいいのかわからなくて」

「苦手ではないってことだろ」

「はいっ」

「へぇ、よかった」

「っっ」

誤解させずに済んだ、と胸を撫で下ろそうとしたところで炭治郎側に置いていた手に温もりが。
そこを見ると手の上に炭治郎の手が重なっていた。もうこれは偶然なんかじゃない。


「どうした、もう酔っ払っちゃった?」

空いた口が塞がらない私に何もなかったかのように聞いてくる先輩に頭がパニックだ。

「普通の炭治郎が責任持って送ってやれよな」

我妻先輩なんてことを!!

「そうだな、さっきから何杯もジョッキ仰いでたし心配だ。送ってくからもう抜けよう」

重ねた手を今度は握られ気づけば二人でお店を出ていた。私の分の飲み代も一緒に置いてくれていた気がする。


「名前の家どこ?」

「○○駅あたりです」

「ここからだと俺んちの家の方が近いね」

「??」


え、どういうこと。





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