社会人
その夜は確か居酒屋でプロジェクトをやりきった後輩を労うという名目の飲み会だった。
散々飲ませて飲んで、終電前にお開き。
後輩たちはそのままカラオケオールに行くらしく、俺や同期はしれっと見送った。大学生みたいなノリ、いつまでやってられるか見物だな。
明日は土曜だし、やっと一週間終わった。
若さに妬むアラサーはさっさと帰って寝たい。
そんな日常だ、
そう思ってた。
なのに目が覚めると女の寝顔。
誰だこいつ、
しかもどこだここ、
ホテルって感じはしないから、この女の部屋っぽい。
「…おい」
声を掛けても起きる気配がない。
つーかめっちゃ可愛い顔してるし、キャミソール一枚でなんちゅう無防備な胸元。
艶やかな黒髪がベットに広がる。
俺こんないい女と寝て記憶ないって悔しすぎる。
ていうか寝たかどうかもわかんねえ。
とりあえず起こさねえと。
「おーい」
肩を揺するとむにゃむにゃ言いながら薄目が開いた。
「…だれ」
「お前もかよ」
「う、あったまいたーい」
駄目だこりゃ。二人とも酔った勢いってやつか。
ていうかまじで可愛いな。
「水持ってくるわ、テキトーにさわんぞ」
キッチンは、こっちか。
なかなか良い部屋に住んでんな、こいつ。
年収俺と同じくらいじゃね。
そこら辺にあったグラスを取って冷蔵庫の中のミネラルウォーターを注ぐ。
「飲め」
「ありがと」
水を飲んで少し濡れた唇。
気付いたら舐めてた。
あー、今日は土曜だよな
もう知らねえ