独占させて
※勇利は現役引退後のプロスケーター
「勝生先生」
振り返った先生の毛先から汗がキラリと飛んでった。
「なに?」
たったそれだけの言葉がどうしてこんなに甘く響くのか。かの伝説のスケーターから色気まで教わったのか。
「その、来月のアイスショーについてなんですが、」
ああ、と言って汗で湿った前髪をかきあげる。
思わず生唾を飲み込んでしまった自分が情けない。
「僕は優秀なマネージャーに全て任せる、と言ったはずだけど」
「そうですが、さすがに確認を取りたいこともあります」
「ふぅん」
わざわざリンクサイドに来て私の腰を抱いて一言。
「君はわかってるはず、僕の魅せ方」
ああ、もうクラクラする。
こんな危険な人、他に知らない。
「はい、そこまでー」
「ユーリ!」
以前より幾分体格のよくなったユーリ。
逞しい腕が私と勝生先生の間に割って入る。
「せっかく来てやってるのに、イチャイチャ見せつけてくんなよ」
そうだ、今度のアイスショーでは彼らのコラボが見れる。今日はずっとその合わせをしていて今は休憩になったところだ。
「ごめんごめん、だって彼女の反応可愛いでしょ」
いつの間にか色気はひっこんで青年さながらの爽やかな笑顔で笑ってる。
不思議だ、そんな彼から世界は目が離せないんだ。
「名前、後でちゃんと話聞くから」
リンクへ戻ってしまった後ろ姿、少し惜しいと思ってしまう自分がいる。
ああ、世界の勝生勇利