どうしようもない
※高校1年
「荒北ぁ、買い出し付き合って」
「面倒くせーからムリ」
「スポドリの粉とタオルに荒北が地面に投げつけて割れたボトル、荒北が踏んづけて壊れたタイムウォッチ、ほかにも荒北のせいで使えなくなった備品」
「ッチ、オラ行くぞ」
顧問から預かった部費を片手に近所のスポーツ用品店へ。
ぶつくさ言いながらも来てくれるらしい荒北は私の前を地面を蹴るようにして歩く。
入部したてより幾分か柔らかくなった彼だがだからといって人当たりが良くなったり愛想が良くなったりなんてことはない。
たぶん他の部員に頼めばみんな快く引き受けてくれただろうし、こうして二人で歩いていたって軽いなんでもないような会話くらいある。
彼らは年頃の男子高生らしい気遣いと青さを兼ねている。マネージャーの自分でさえも少しの女の子扱いをしてくれるし、さぞモテるだろう。
それに比べて荒北はどうだろう。
自転車に、福富と肩を並べることに夢中でそれ以外のことなんて興味もなさそうだ。
性的意味を含む恋愛という感情は荒北の頭にはいまだ無い。
彼の純粋な世界には入れない。
荒北靖友、私の好きな人。