なんかこわい荒北3

「黒豆」

にゃおーん、と鳴き返す黒猫。
美化委員の日替り当番で花壇の雑草抜き中に現れた丸々とした猫。

鳴き返したし、黒豆って呼ぼう。

うにゃうにゃと話しかけてくるので「そうだね、すっかり夏だねえ」と返せば今度は強めに話しかけてくる。

「ごめんね、何言ってるかわかんないよ」

「腹減ったんだとヨ」

「荒北君!」

突然の荒北君の登場に尻餅をついてしまった。
もう一度しゃがみ直すと、荒北君も同じように隣にしゃがんで手に持っている缶詰を開けている。

「オラ、食え」

黒豆はひと鳴きしてがっつき始めた。猫缶をわざわざ持ってくるなんて随分可愛がってるんだなあ。

「で、苗字ちゃんはこの炎天下で何やってんのォ」

「美化委員のお仕事をね」

「汗すげえ」

そう言って汗で顔に張り付いた前髪を分けてくれた。急に触られてビクリとしてしまう。

「あ、ありがとう、、」

「ウン」

「…」

あれれ、なんか顔近いけど。

「苗字ちゃん、汗かいててもいい匂いすんねェ」

「荒北君近い!近い!」

何故か首もとで匂いを嗅ごうとしてくる荒北君。
好きな人に汗くさいのを嗅がれるなんて私の乙女心が死んでしまう。

「いい匂いなんてしないよ。汗臭いから、やめて?」

「それ興奮すんね」

「は!?うひゃ」

な、舐められた!!首舐められた!!なに!?

「固まってんなヨ、そんな無防備だとちゅーすっぞ」

思考停止だ。

「うわ、苗字ちゃん顔真っ赤ァ」

そう笑いながら鼻にちゅっとキスして荒北君は去っていってしまった。

黒豆が目の前で満足気に食後の毛繕いしているのを暫く眺めていたら意識が薄れて体が傾いたとこまでは覚えてる。

目が覚めると保健室のベットの上で、あのあと教室に戻らないのを心配して戻ってきてくれた荒北君が熱中症でぶっ倒れた私をここまで運んでくれたらしい。
荒北君好き。




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -