飼い犬に襲われる
「ワウ!!」
「ちょっと、わかったから引っ張るな」
足の周りをグルグル回る大きな犬は先日帰り道に拾った子だ。
さっきからご飯の催促がすごい。
「ヤス、おすわりって知ってる?」
すると渋々座るワンコ。もしや前の飼い主とかがちゃんと躾してたのかもしれない。
「いい子。はい、ご飯」
ご飯にがっつくヤスに笑顔になる。
食いしん坊で甘えん坊でふてぶてしくて可愛い大きな犬。突然の同居人はとても大切な存在になりそうだ。
と、愛犬とのほのぼのライフを期待していたのに
「帰ってくんのおっせェ!」
「ごめんごめん」
黒い犬耳が生えた頭を撫でればそんなことで許すかと更に機嫌を悪くするヤス。その見た目は犬耳と尻尾を生やした人間の男性だ。
ある日目が覚めたらこの姿になっていてそれから頻繁に犬から人間に変わるようになってしまった。
とても困るのがこの姿のときはドックフードは食べてくれないこととスキンシップが犬のときと同じなことだ。人間の姿で擦り寄られたり顔を舐められれば変に意識してしまう。
「ヤスの好きなベプシ買ってきたよ」
「チッ、ありがとネー」
どうやら機嫌を治してくれるみたいだ。よかった。
「ところでまたオスの匂いすんだけどォ。なんでかな?」
「ああ、なんか酔ったサークルの先輩に抱きつかれて」
「抱きつかれただけ?」
「うん」
「…ホントにィ?」
「う、うん」
これはまずいやつだ。
「嘘は良くないヨ名前ちゃん、正直に言え」
「…キスされました」
「舌は?」
「ちょっとだけ入れられた」
「お仕置き、ダナァ」
あーあ、新品のストッキング破られた。
明日腰痛いだろうし声も枯れるんだろうな。
「余所見すんな、余裕なのムカつくから」
とんでもない拾い物をしてしまった。