隣の席の新開

「新開君」

「ん?」

「なんか近くない?」

「そうかなぁ」

そう言って更に近づいてくる。
そっぽを向けば頬をつんつんしてくる。

「…なんなの?」

「ちょっかい出したくってさ」

バキュン!じゃねーよ。

「いや、今授業中だよね?新開君が教科書忘れたから机くっつけてんだよね?」

「ああ!そうだったな!」

「声でかいよ」

駄目だ、この人の独特なペースにのまれてる気がしてきた。私の反応を楽しんでる。
もう気にしないのが一番かな。

「苗字は字綺麗だよな」

取り合えず無視だ。
チラリと新開君のノートを覗けば丸っこい字。新開君らしい。
ノートの端には落書きがありおそらく人間の顔らしきものだ。だって絵の下にやすともって書いてある。なかなかの画伯だ。

「苗字」

「うわ」

びっくりした。ノートから視線を上げれば目の前に新開君の顔があったから。


「キスできそうだな」

「いや、すんなよ!?」

思わずガタガタ音を立てて椅子を引いてしまった。
教壇には呆れ顔の先生。

「苗字に新開、お前らいい加減にしろー。特に新開は教科書忘れ過ぎだ」

「うっかりね」

絶対わざとだ、クラスメイトの心はひとつだった。


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