と面倒な女(改)
マンションのエレベーターから降りると自分の部屋の扉の前で見覚えのある女がうずくまっていた。
「何の用?」
勢い良く上げられた女の顔はすごい形相だった。
釣り上った目元は濡れており泣いていたのは一目瞭然。
「何の用ってなに。どれだけ電話したと思ってんのイルミ」
言われて携帯を見ると着信67件。
なにこれ気持ち悪いんだけど。
「仕事中はほとんど電話に出れないって言ったじゃん」
そう言うと外だというのに大声で喚き散らすもんだからしょうがなく部屋に入れた。
とりあえず落ち着くまで放置しようと思い、適当な部屋着に着替えてそれからヤカンに水を入れコンロに置き火を着ける。
女は落ち着いたのかリビングのソファーに座り鼻をすすっていた。
「イルミ本当は私のことなんてどうでもいいんだ。イルミも私のこと捨てるんだ」
どうでもいいというか面倒くさい。
「仕事とか言ってどうせ違う女と会ってるに決まってる。それで心の中で私のこと笑ってるんでしょ」
俺にはそこまでのお前に対する興味すらないのに。
「そんなことないよ。ごめんね」
「心がこもってない!」
どうしたものか。
まあこういう場合は無理矢理にでも抱けば大抵次の日には上機嫌で帰っていくんだよね。
また喚き出されてはたまらないから早々に女の口にキスした。
「やだ、ちょっとイルミ」
満更でもなさそうだから更に口付けを深くしながらソファーに押し倒した。
「で、あんなに電話よこして何の用だったの」
「んあっ、もういいから、早くちょうだい」
こんな女を抱く自分もどこかおかしいと思う。
キッチンのヤカンが沸騰を知らせるように煩く鳴いていた。