繋がった影を誰も踏んではならぬ

※学パロ



長い前髪を耳にかけ、シャーペンをクルッと回しサラサラとノートに解答を書き込んでいく。

そんな先輩の動作にさえ視線を奪われ一々ドキドキしてしまう私はもう勉強どころじゃなかった。


「名前、勉強しないなら俺帰るからね」

「あ、わ!やりますやります!勉強やります!」


慌てて教科書を開き数式を見ると何だか吐きそうになる。


「…おええ」

「やめてよ。気持ち悪い」

「数学まじ無理。数式きもい。先輩助けて」

「…とりあえず問題解きなよ。わからなかったら教えてあげるから」


「先輩神。結婚しましょう」

「嫌だよ」




3日後に迫る期末テストに向けてやっと勉強する気になったものの数学だけはどうしても自分一人の力ではどうにもならなくてイルミ先輩に頼み込んだ。

嫌々ながらも一緒に図書室で勉強してくれる先輩はやっぱり優しい。


「あ、そういえば昨日部活でキルア君怪我してましたよ」

「へえ。まだ部活続けてたんだ。名前がマネージャーやってるようなバスケ部だからやめとけって言ったのに」

「ドウイウ意味デスカ」

「そのままの意味だけど。で、ちゃんとキルの手当てできたわけ?」

「もちろん!ていうかキルア君ほんと可愛いですよね。キルア君みたいな後輩がいて私嬉しいです」

「キルが可愛いってもしかして名前キルのこと好きなの?殺すよ」

「(目が本気だ…)先輩のブラコンは健在なんですね」


シャーペンの先を突き付けて脅してくる先輩は冗談抜きで恐ろしい…。


「先輩せっかくかっこいいのに。そんなんだから彼女できないんですよ」

「別に彼女欲しいなんて思ったことないから」

「ていうかキルア君、今好きな子がいるって」「は?」


また余計なことを口走ってしまった。明日キルア君に怒られるな。
先輩は大きな溜め息を吐くと椅子の背もたれに体重をかけてのけ反った。そんな動作もどこか憂いを含んでいてドキドキする。

「最近キルが反抗期でさ、ほんと困るよ…。家業は全然手伝わないくせに部活だの恋だのって腹立つよね」

「またまた。先輩寂しいなら寂しいって言えばいいじゃないですか。キルア君が兄離れしても先輩には私がいますよー」

「…………」





「…………………何か言って下さい私が恥ずかしい」

いつもの調子で先輩が毒を吐くかと思ったのに先輩は何故か沈黙。これじゃあ半分冗談で言った私が恥ずかしいやつみたいじゃないか。



「いや、名前も言うようになったよね。ちょっと驚いた」

「うへへ」

「調子に乗ってる名前は馬鹿みたいで可愛いよ」


褒めてるのかけなしてるのかよくわからない先輩の態度にも今ではもう慣れたもので難なく受け流せる。




「あ、君の無駄話を聞いてたらもうこんな時間だ」

「え!帰っちゃダメですよ!私まだ数学の教科書開いただけなのに」

「やだよ。志○動物園に間に合わなくなるじゃん。今日のにゃんこ特集は絶対に見逃せない」

「えー!」
先輩の猫好きは知ってたけどなんだろうこの敗北感。

「ほら、送ってあげるから帰ろうよ」



「…手も繋いでくれるなら帰ります」







なんだかんだ言って私のことを甘やかす先輩にもっとめちゃくちゃにドロドロに甘やかされたいと願ってしまう。




繋がった影を誰も踏んではならぬ



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