いつまでもあたたかくいよう
※社会人
年明け前の特番に飽き飽きしてきたが温まったコタツから抜け出す気にも動く気にもなれず、テレビをぼーっと眺めていた。
そろそろ眠くなってきた。コタツの机に俯せになってしまおうかと思ったとき玄関の扉がガチャリと開いた。外の冷気が部屋に流れ込む。
「遅い」
新年まであと数分のところで帰ってきた暦にわざとらしく口を尖らせてみた。
「ごめんね。仕事長引いちゃって」
口だけであまり悪いと思っていないのか、私のことなど目もくれずいそいそときつく巻かれていたマフラーを取り、着ていたコートを脱いでハンガーに掛けている。
肩まである黒髪が静電気で数本フワフワとしてしまっているが、何だか腹立たしいので知らないふりをした。
「ちょっと何で靴下まで脱ぐわけ?」
何故か靴下まで脱ぎ始めた暦は私の質問に悪戯っ子のように笑った。暦にしては珍しい笑い方にすこし胸が跳ねる。
「何でだと思う?」
質問したのは私なのに。暦は妙に楽しそうにしてコタツに足を入れた。意味がわからなくてまたムッと口を尖らせた。
「知らないよそんなの」
向かい側に座っている暦から顔を逸らしてリモコンに手を伸ばし適当に番組を変えてみた。どれも似たような番組でコメディアン達の笑い声ばかりがよく聞こえる。いっそDVDでも見ようかな。提案しようと暦を見ると何故か手を深くコタツに突っ込んで何かを探しているようだった。
はて。何をしているのかと思っていると急に足首を捕まれた。暦の手はまだかじかんていて冷たい。
「ちょ、冷た!」
するとズルリと靴下を脱がされた。意味がわからない。私の体温でぬくぬくした靴下はコタツの外にポイッと投げ出されてしまった。
「何すんのよ!暦の馬鹿!」
「馬鹿はひどいなあ。えいっ」
「ひゃあっ」
コタツの中で裸足になった私の両足は暦の冷たい足に挟まれてしまった。そうかこれが狙いか。
「うわあ、あったかーい」
すりすりと私の足と自分の足を擦り合わせている暦は本当に寒かったんだろう。帰宅は遅かったけど大晦日なのに寒い中仕事してきたのだ。まあ今回は大目に見てあげなくもない。と私も自分の足を暦の冷たい足に擦り合わせた。
「んふふ」
コタツの中で足を絡め合っているのが何だかおかしくて笑いが零れた私を暦は優しく笑って見ている。そんな今がすごく愛しいと思った。
テレビからカウントダウンを刻む声を聞きながら、お互い顔を寄せてキスをした。
今年もこの先もずっとずっと愛しいあなたと一緒にいれますように。
君といつまでも
あたたかくいよう