続
「えーと、どうしてここに?」
「来ちゃった」
いや、その理由を聞いてるのに!
この人が何を考えているのか本当にわからない。
この状況を喜びたいけど喜んでいいのかわからない。
「あー、もしかして俺ってすごくなまえさんのこと混乱させてる?」
「今更ですね」
「ははは!とりあえず話したいから場所変えない?」
こんな職場に退勤を狙って何の連絡もなしにやってくるメリットて真波さんにあるだろうか。
別に私にどう思われても関係ないってこと?
「真波さんはこれから私を更に混乱させる気ですか」
「えっと、どちらかと言うと混乱してるのを整理したいって思ってる」
「じゃあ着いて行きます」
「ありがとう」
なんでそんな嬉しそうに笑うんだ。
せっかく自分のプライドのために警戒心を総動員してるのにそんな顔見たら流されそうになるからやめて欲しい。
「ちょっと電車で移動したいんだけどいい?」
「はあ」
行きたいお店でもあるのかと素直に着いていった自分が馬鹿だった。
「ここ俺んち」
そこそこ値段のしそうなマンションの一室の前で立ち尽くす。
「別に襲ったりしないし、終電より早く帰すから」
玄関のドアを開けながら警戒する私に少し困ったように言う真波さん。
今のところ私の反応を楽しむ態度ではなく誠意を見せてくれる発言が多いので一先ずここは頷いて玄関へ足を踏み入れた。